第11話 広告兵器密輸問題
自分たちを見逃してもらいたくば、この街から10キロほど近くにある廃棄された穀物倉庫に隠してあるμ社の広告兵器を積んでこの街に運ぶこと。それがあの狸親父の依頼の内容だった。野郎どうも臭いと思っていたがやはりμ社と繋がっていたのか。そして迷い込んだアド・トラックを利用して密輸した広告兵器でクーデターを実行し、町をμ社で占拠して、自分はその頂点に君臨する腹づもりなのだ。
「それで、枇杷島さん。この密輸が無事終わったら、あの人は俺たちを見過ごしてくれるんでしょうか・・・」
「ああ、事が済んだら間違いなく口封じのために始末されるな。」
そうですよね、と金山トオルなる若者は肩を落とす。今俺たち3人はその秘密倉庫とやらで広告兵器の荷造りを行っていた。倉庫ではμ社のアド・ロイドたちがせわしなく動きまわってアド・トラックを改装している。奴らの改造によってキャブからの操作でコンテナトレーラーの上半分が段ボール箱よろしく四方に展開し、わざわざ荷台から降りずにアド・ロイドが攻撃できるようになった。いうなればアド・トラックに偽装した、武装
「橋井さん、どうです?」「ああ、動作試験は上々だ。」
「あとは、武器を積み込むだけだが・・・あんた等、まさかこのままのこのこと殺されに都市に戻るつもりじゃないだろうな。」
「もちろんですよ、枇杷島さん。このまま帰る訳にはいきません。」「私たちには”切り札”があるんでね。」
金山と橋井の二人がアド・トラックのテストをしていると、そこへゴロゴロと滑車のついた下半身を転がしてアド・ロイドがやってきた。能面みたいな顔面部に黄色い印がついているため、これは指揮官型だ。
「お前たち、そろそろエンジンを吹かしておけ、あとは我々が乗り込んで内側から荷台を閉める。」
「・・・残念だが、私はたとえアドトラックとはいえ荷台に武器を積むのは嫌いでね。君たちを乗せるわけにはいかないよ。」
「・・・どういうつもりだ、人間。貴様は我々μ社のゲリラ作戦に参加しないというのか。」
橋井という男はいったい何を考えているのだろうか。指揮官型の機械音声が橋井に詰め寄る。だが、橋井は表情一つ変えずに指揮官型になおも逆らった。
「私たちは、μ社にも、UAGにもどちらの側にもつかない。この広告だらけの狂った世界をぶっ壊すためだけに動く。それだけだ。」
「・・・あくまでも我々に味方しない、と?」
「そうだ。少なくとも妻子を殺したμ社なんかと手を組むなんて、まっぴらごめんだ!」
「・・・敵対の意思を確認。データー・アップデート。ただ今の時刻をもってお前たちの登録データーは味方から敵へと置換された。全機体、攻撃制限解除。目標、敵対人間3体。」
機械的な命令と共にこの倉庫内にいるアド・ロイドたちが一斉に広告武装状態に入る。銃口は全て俺たちに向けられているのに、この二人は微動だにしない。流石に慌てた俺は二人に詰め寄った。
「おい、どうすんだ!俺たちは何にも武器を持ってないんだぞ、持っていたところで多勢に無勢だぞ!」
「・・・武器は要りませんよ。たった一言、言ってあげるだけでいいんです。橋井さん。今回は貴方に譲ります。」
「すまんな、トオル君。」
そういうと橋井はアド・ロイド軍の目の前に立った。当然のごとく丸腰で。だが、その口元はわずかに笑っていたのだ・・・
「たとえお前たちが何千発、何万発の砲弾を撃ち込んでも、どれだけの広告を流しても、私やトオル君のたった一言でお前らは一瞬で無に帰すのだ。・・・枇杷島くん、今から私たちの切り札というものを見せてあげるよ・・・」
そして橋井は深呼吸をすると、大声でその言葉を叫んだ。
その言葉でアド・ロイドが機能停止して、頭から倒れ落ちる姿を見て、俺は正直二人を甘く見ていたな、とさえ思った。その言葉は・・・
「アヨガン!!」
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