仮面夫婦

連喜

第1話 仮面夫婦誕生

 これは人から聞いた話。直接知ってる人ではない。

 ある夫婦がいた。奥さんはAさん。旦那はBさん。


 愛はなかったけど、たまたま子どもができてしまったという理由で、入籍したそうだ。一応、結婚前に2人で話し合ていて、協力して子どもを育てるが、お互いの生活には踏み込まないという約束になっていた。家計は別々。旦那が家のローンや水道光熱費などを負担。奥さんは食費担当。作るのは奥さんで、家事もすべて担当していたそうだ。保育園の送迎は、基本奥さんがやるけど、彼女が残業や出張時は旦那さんが代わりに行くこともあった。リビングは共有だけど、部屋は別々。子どもはお母さんと寝ていて、世話をするのはほとんどお母さんだった。普通は、お父さんが風呂に入れたりとかするんだろうけど、本当の夫婦じゃないから、Aさんが家のことをほぼ一人でやっていた。


 どちらも働いていたのだけど、旦那さんは高給取りのサラリーマン、奥さんも総合職のキャリアウーマン。仕事関係で知り合って、いわゆるセフレになったらしい。セフレなのに子どもができたらまずいと思うのだが、奥さんがもう30代後半で、そのチャンスを失ったらもう次がないと思ったらしい。旦那さんの方は、一生遊んでいたいタイプで、家庭を持ちたいけど、そんな生活を許してくれる人なんていないから、40代半ばでまだ独身だった。2人とも、かなり稼いでいて、結婚した時はお似合いのカップルだと周囲は思ったようだ。


 しかも、Bさんが働けなくなったら奥さんが面倒を見るということで話がついていた。随分、Aさんには不利な結婚だった。そこまでしても、AさんはBさんと結婚したかったんだろうと思う。まあ、奥さんの方は好きだったんだろう。


 しかし、こんな家庭で育てられる子どもがちょっと気の毒ではある。

 両親が不仲なのには、子供も気が付くんじゃないだろうか。


 母親は生まれてきた男の子をすごく可愛がり、旦那もそれなりに喜んだ。

 しかし、出産後、2人に夫婦の絆が生まれたかというとそうではなかったようだ。母親は約1年間休みを取って、復帰。そしてまた半年後くらいに妊娠した。


 普段は性行為は全くしていなかったけど、2人目を作るためだけにしていたそうだ。3か月目で無事懐妊して、それっきりになった。


 こんなのでよくやっていけると思うのだが、子どもの前では普通の仲のいい夫婦を演じていた。


 お互いをパパ、ママと呼び合っていた。

 しかし、話す時、奥さんは敬語。

 旦那は上司のようだった。

 ちょっと、エロい感じでいいような気もするが、2人に夫婦関係はなかった。つまり、ほぼ他人のようなものだった。



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