第93話 World Barretter Ⅱ

散弾放パイロボラム・イアつ雷撃クラ・フルメン・の砲兵キャノン・マイルズ・8ミリテス×3マルチプライスリー

装填パラメート・矢弾フレシェット征雷トニトルアルス・滅散インテリートゥス!!」


追尾し穿つセミタ・ルクス・イ光の狂兵ンサヌス・マイルズ・28ミリテス

征聖サンクトゥス狂武・インサヌス!」


追尾するセミタ・グラチエ氷撃のス・エクイタテ騎乗兵ィオ・マイルズ・21ミリテス

征凍コンジェーロ槍駆・ハスタクーレ!」


追尾するセミタ・フルメン・セ雷撃の斧兵キューリス・マイルズ・21ミリテス

征雷トニトルアルス斬斧・ズラッシング!」


 こうして群れを解体するべく、少女の魔術六連撃が放たれていった。ただし徐々に使っていればデバフとは言え多少は慣れるが、ほぼ同時に6回も使えば慣れる以前にデバフに拠って身体の状態は激悪になる。

 そして役目を終えた魔道具マジックアイテム達はさらさらと音を立てて消滅していく。



 少女の状況は最悪だが、周りには代わりに闘ってくれる総勢94柱の兵士達が降臨していた。

 斯くして兵士達は各々が与えられた役割を実行していく。



 先ず、砲兵24柱が凄まじい轟音と共に一斉射に拠り砲弾を放った。放たれた砲弾は少女が指定した「フレシェットダーツの矢弾」だ。

 更にそれらの砲弾には砲兵に付与された「雷撃」の力も加わっている。


 砲兵から放たれた砲弾は空中で炸裂すると、「雷撃の子弾フレシェット」を散弾のように撒き散らし群れに襲い掛かっていった。そして、1つの砲弾の中には「雷撃の子弾フレシェット」が、およそ8000本入っている。


 24柱の砲兵が放った砲弾から炸裂した「雷撃の子弾フレシェット」の数は、優に19万本を超えていた。拠って「雷撃の子弾フレシェット」1つ1つの威力は弱くても、数の暴力と言う名のダメージ蓄積量は絶大だった。


 これらの砲撃で群れの約半数近くが為す術無く屠られ、眼下の海に墜ちて行く事になる。比較的威力の弱い息吹ドラゴンブレスは使えるが、主に自身の爪や牙といったモノを主力武器として、近距離戦闘ショートレンジでしか戦う術を持たない「新生龍種レッサードラゴン」達の、末路とも言える光景だった。

 そして一度の砲撃で魔力を使い果たした砲兵達は役割を終え、「ばちッばちばちッ」と雷の余韻を残して消えていく。



 余韻に浸る事の無い残りの70柱は各々、群れに対して特攻していく。

 先行したのは28柱の「光の狂兵」達だ。


 「光」を付与された狂兵達は先陣を切り、次々に群れを襲っていった。

 群れの先頭集団から半ばまでは、残虐な砲撃の影響下に置かれていた為に既に墜ちている。更に残った群れもある程度のダメージは負っていた。

 そこを目掛けて狂兵達が斬り掛かったのだ。速さに長けた光の狂兵達は群れの中腹から最後尾までの距離を、ダメージを負わせながら疾走り抜けて行ったのである。



 次に「氷」を付与された騎乗兵が追撃を行う。騎乗兵達は群れの各個撃破を行い、それに拠って中腹一帯に至る群れの龍達は墜ちて行く事になる。騎乗兵達は輝く氷の結晶を空気中に残し、狂兵達の残した光はそれに拠って反射し、キラキラと煌めく余韻を残していった。



 残りの21柱の斧兵はその一撃の威力が大きく、付与された「雷撃」の効果も相俟って確実に龍種ドラゴン達を仕留める後詰めの兵だ。


 その甲斐もあって少女が喚び出した兵達が全て消え去る頃には、群れは壊滅状態になっていた。要は200匹以上いた龍種ドラゴンの大群は、残り10匹足らずまで数を減らしていたのである。



 群れの残りは、身体が大きめの「亜龍種エルダードラゴン」が2匹と、残りは「新生龍種レッサードラゴン」と見受けられた。

 だが、それら残りの龍種ドラゴン達も翼や胴体に傷を負っているのが殆どで無傷な個体はゼロだった。



「体調はサイアク。でも、これで9割以上討伐出来たなら恩の字ね……暫く経てばデバフも消えるから、それまでにザコ龍達を倒せればなんとかなる……と思いたいわッ!」


グルルルァ


「行くわッよおぉぉぉぉぉッ!」


「豪炎の型あぁぁぁぁッ!うりゃりゃりゃりゃりゃりゃあぁぁあぁぁぁぁッ!!」


どごどこどごどごどごぉぉぉぉん


「まだまだぁッ!破竜の型ぁッ!」


しゅしゅばッ


 少女は残りの群れに対して特攻を仕掛けていった。少女は大剣グレートソードディオルギアを構えると群れの残りが集まっている所に向けて加速し、次々に「型」を放っていく。

 それはもう、完全な精神論であって、なりふり構っていられないのは明白だった。



 斯くして、最後の新生龍種レッサードラゴンが墜ちていく。残すところは「亜龍種エルダードラゴン」2匹だけになっていた。



「出来れば、亜龍種エルダードラゴンは最初の内に沈めておきたかったけど、まぁ、仕方ないよね。運だもの……それじゃ、群れの解体最後の大詰めといきますかッ!」


グルルル グルオォ


 少女の目論見では、最初に放った魔術の連撃で「亜龍種エルダードラゴン」だけは仕留めておきたかった。「新生龍種レッサードラゴン」と比べて「亜龍種エルダードラゴン」は体格も大きいし力もある。討伐難易度はAランクだ。

 とは言っても、少女であれば苦戦する程の相手ではない。ただ、近距離戦闘ショートレンジなら新生龍種レッサードラゴンの方が倒すのがラクだからと言う理由だけで、先の魔術で仕留めておきたかっただけだ。



 少女は機動力を活かしたヒットアンドアウェイ方式の攻撃で「亜龍」を翻弄ほんろうしていく。大剣グレートソードの一太刀を入れるとそのまま戦線離脱して、相手の攻撃範囲から退しりぞき再び急接近して一太刀。

 それを幾度となく繰り返し1匹は海の藻屑となっていった。



 最後まで残った亜龍種エルダードラゴンには「流水の型」を見舞った。その華麗な一撃に拠って、最後の亜龍種エルダードラゴンは短く吼え、盛大な水しぶきを上げて海中に没したのである。


 こうして、押し寄せて来た全ての群れを殲滅した少女は、輝龍アールジュナーガ・ウィステリアルと向かい合ったのである。



「アナタが連れて来た群れは殲滅したわ。残す所はアナタだけだけど、どうするの?最上位で、龍種ドラゴン達の王ならば、無駄な争いは好まないと思うんだけど?」


「あれだけの群れをこのような短時間で殲滅するとはな。ヒト種の娘よ、面白い。キサマの力、測ってやる。掛かって来い!」


「はあぁぁぁ。る気になってるからには、らざるを得ないんでしょうけど、るからには手は抜けないわよ?」


「ヒト種如きが……手を抜いて勝てるとは思わないコトだ」


ごおぉぉぉぉぉ


「なんて威圧感プレッシャー、ホントにやんなっちゃう。えぇい、もう、なるようになれッ!女は度胸よ、るならる時ればらいでかッ!でえぇぇぇぇやあああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」


 少女は正直なところ、。だが、そうは問屋が卸してくれないらしい。

 輝龍相手に正攻法で闘ったとしても、決して倒せる相手では無い事を少女は理解している。かと言って邪道でも奇策でも結果は同じだろう。


 今にも逃げ出したい気持ちを抑えて大剣グレートソードを固く握り締めた少女は、空を駆けて輝龍アールジュナーガ・ウィステリアルに対して正面から挑んで行ったのである。

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