第80話 Whining Cheeper Ⅱ
ぴーんぼーんぱーんぽーん
「あと30分で各種防壁の展開を行って参ります。館内にいるお客様は速やかに退館して
「繰り返します——」
少女がセブンティーンをかっ飛ばして、公安に着いた時には既に退館を促す館内放送が流れ始めていた。
そして少女は2Fまでダッシュで駆け上がると、受付のミトラに声を掛けていった。
ぽーんぱーんぽーんぴーん
ばんッ
「にゃにゃなんにゃッ?!」
「ねぇミトラッ!マムはいる?」
「い、いるハズだにゃ?どしたのにゃ?」
「そう、ありがとッ」
「——って、アレ?どこにいったにゃ?」
きょろきょろ
「あっ!もうあんにゃ所に!はぁ……。相変わらず、
こんこん
「入っておいで」
がちゃ
「そろそろ来る頃だと思ってたよ」
「もう、分かっているの?」
「コレの事だろう?」
マムは少女に対して1枚の画像を投影していった。それは少女が見ていた画像より、より鮮明で細部まではっきりと分かる画像だった。
そしてその画像を見た少女の脚からは力が抜け、その場に座り込むようにして身体が崩れていった。
「やっぱり、これは、
かつて、1匹の
神奈川国に所属するハンター達は公安、ギルドを問わず、その全てが
その結果、神奈川国内の全てのハンターがその
もっと早く接近に気が付いていれば、他国に
その
然しながらそんな
その新米ハンターは右手に一振りの刀を持ち、左肩に口径89mmの連装式ハイパーバズーカを
その連装式ハイパーバズーカは実弾を撃つ事は一切出来無い。その代わりに、魔術を使う為の回路が2つの砲身内にそれぞれ刻まれている。
これは実弾兵器では無く、魔術兵器の類に当て嵌まる——そういった代物だった。
何故にそんな高価なモノを新米ハンターが持っていたのか問題視される事はなかったが、それらの武装で
魔術回路を搭載しているハイパーバズーカは、詠唱に掛かる時間を短く済ませる事が出来る上に、更にはその魔術回路が威力を増幅させる効果も持っている。
そしてその砲門が2つ。
拠ってハイパーバズーカに拠る魔術砲撃を
その荒々しい闘い方に、付近にいたハンター達は声を失っていった。
一方で壮絶な闘いに因って、街は破壊し尽くされる事になるが、そのハンターが
そして、そのハンターが参戦してから数時間が経過した頃に、その
その時の
そして、その「水龍アクアリンクル」を討伐したのが弱冠15歳のルーキー「キリク」だったのである。
討伐し終えたキリクは水龍アクアリンクルの素材を使い、一振りの刀を造って貰った。水龍アクアリンクルの身体は淡いコーラルピンクの体色をしており、その素材から造られた刀の刀身はその水龍の体色と同じ輝きを放っていた。
キリクはその刀を受け取ると、「
後に「何故、「刀」なのに「剣」なのか?」と聞かれる事があったそうだが、その時は「師匠から受け継いだ流儀だから」とだけ話していたのは余談である。
キリクは水龍の素材から一振りの刀だけを造って貰うと、余った残りの素材は全て神奈川国に寄付した。
ちなみに
水龍の素材は破壊し尽くされた街の復興に掛かる費用や、怪我人の治療費、家族を失った者達への見舞金などになったのである。
その結果、それらの功績を讃えられ、キリクはルーキーでありながら「星」を与えられた。
その翌年に忽然と姿を消すまで、キリクは「神奈川国の英雄」だったのである。
マムが投影してくれた画像には、しっかりと淡いコーラルピンクの刀身が映し出されていた。
「
「……」
「イヤよッ!そんなの認めない。絶対に生き残るってキリクは言ったもの。嫌よ……そんな……。アタシそんなの絶対にイヤよッ!」
「…………」
「だから……なんで、本当に……そんな、キリクぅ。うっうっ……うっ」
少女の瞳は
それは仮に運命という物がモノあるのなら、それを全て呪うかのような悲痛な叫びだった。
そしてその後に待っていたのは、声にならない声と止まる事を知らず、
マムは
少女のキリクに対する恋心にマムは昔から気付いていた。だからこそ、それを失った悲しみに対して、何か出来る事を必死に模索していた。しかし、何も見付からない。
見付けられたのは
「そろそろ落ち着いたかい?」
「マム、決めたわ!アタシ、キリクの
「——ッ」
「この列島のどこにアイツが来ても被害は
ぎりッ
「アタシにキリクの仇を討たせてッ!」
「おいおい、キリクはまだ死んだって決まったワケではないだろうに?それに、
「いい……それで……いい……わ」
「それにアンタにあそこまで行く移動手段もなければ、仮に討伐出来たとしても、あんな図体なんだ、持って帰ってこれやしないだろう?」
「いいの!それでもいいのッ!マムッ!お願い……アタシを行かせて……本当に、本当に……一生のお願いだから……」
「はあぁぁぁぁぁぁ。分かったよ、アンタがこうなったらテコでも曲がらないからね。止めはしない。だが1つ条件がある!」
「条件?」
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