第62話 Terrible Instructor Ⅲ

「そう言えば、「龍征波動ドラゴニックオーラ」って、どういった原理なの?」


「救世主様は龍人族ドラゴニア固有能力ユニークスキルが気になるのか?一体どうしたのだ?」


「クリスの試験官として、クリスの実力や能力スキルについて知っておいても損はないでしょ?」


「うむ、なるほど。本来は秘する掟があるが、既に目の前で散々使っているしな。そもそももう村の住人ではないからこの際だ、話してしまおう!」


 龍征波動ドラゴニックオーラ龍人族ドラゴニアのみが使える固有能力ユニークスキルだが、少女は改めて効果効能とが知りたかった。


 既に少女が見た効果効能は、激化インテンス以上の身体能力ステータス向上のバフ及び、強化エンチャント以上の持続性。

 武器に宿して中距離ミドルレンジ攻撃としての技と、近距離ショートレンジ攻撃時の技。後は故意による暴走だけである。


 ここまで複数の効果効能を備える固有能力ユニークスキルは珍しいが、逆にこれだけ複数の効果効能があるのであればデメリットは存在するだと考えていた。


 だから改めて聞く事にしたのである。



我らドラゴニア固有能力ユニークスキルは簡単にいってしまえば、万物の全てに効果があるのだ」


「えっ?それってどういう事?」


「救世主様が見た龍征波動ドラゴニックオーラは此の身に纏った時と、技として発動した時で宜しいか?」


「えぇ、そうね。それで合ってるわ」


「そうか。それなら2つとも同じ原理で使われているから、結局は同じ事をしているだけなんだ」


「分かり難いわね」


「簡単に言ってしまうとだな。木の棒を金属の棒に変えるようなモノだ」


「ごめん、クリス。もっと意味が分からないわ。それって簡単に言い換えてないわよ?」


「うむむ。固有能力ユニークスキルの使い方を教わる時にそのようにして習うのだが、これでは伝わらないのか……」


「いや、それってじゃなくて伝わらないと思うわよ?」


「なん……だと?!此の身はそれを信じて使えるようになったのだがッ!」


「あぁ、やっぱり天然なんだわ……はぁ」



 龍征波動ドラゴニックオーラは万物全てのモノにまとわせる事が出来る。そしてそれは纏った対象物の属性値を強制的に改竄かいざんする効果を持っている。

 その結果として元々のモノが持っている限界値を、改竄したモノの限界値まで底上げするバフを受ける事が出来る……と言う固有能力ユニークスキルだ。


 分かりやすく言えば「木の棒」があるとする。それの属性値は「木」の持つ耐久性を上限としているが、龍征波動ドラゴニックオーラを纏えばあら不思議、その「木」は「木」という属性値を改竄される。


 結果として「木の棒」は見た目こそ「木の棒」だが、中身は鋼鉄よりも硬くなるというを起こせる。

 更に限界値を上げる作用によって、ただの「木の棒」が切れ味抜群の刃物にも成り得るという理論である。


 これを龍人族ドラゴニアの人体で例えるならば、属性は獣人種だが改竄を行い龍種ドラゴンの属性に変化させる。

 更には限界値を上げる事で龍種ドラゴン身体能力ステータスをベースに補正値が最大まで入る。しかし、どのような龍種ドラゴンがベースになるか分からないワケではない。

 それが個人差であり潜在能力と言える。


 各龍人族ドラゴニアが持つ潜在的な能力や血筋によってベースとなる龍種ドラゴンは変わり、それによってバフの入り方も人それぞれ違う結果となる。とまぁ、簡単に言ってしまえばそんな感じがバフによる効果だ。


 更に言えば技の場合も同じである。技は自分の身に纏った龍征波動ドラゴニックオーラを刃などに変えて放つモノであり、要は龍人族ドラゴニア版の息吹ドラゴンブレスと考えられる。

 身体強化という属性値を武器という属性値に変換し、それを放つだけだ。深く考えてはいけない。

 「考えずに感じるモノ」……だそうだ。



 そしてここからがデメリットの話しとなる。それは「継続時間には個体差がある」という事だ。




「この固有能力ユニークスキルは加齢すればするだけ長く使えるのだ」


「加齢?歳を取るってコトかしら?」


「そうだ。10年で60秒伸びる」


「1年で6秒ってコトでいいのかしら?」


「そ……、そうだな」


「そしたら176歳のクリスは17分36秒ってコトであってる?」


「ッ?!う……、うむ。そのハズだ」


「ねぇ、その時間を使い切ったらどうなるの?例えば1回の戦闘で17分36秒使い切るのと、複数回の戦闘で17分36秒使った場合はどうなるのかしら?教えて、クリス!!」


「こ、此の身も詳しくは分からないのだが、1回で使い切った場合は使い切ってから24時間使えなかったハズだ」


「ふぅん。それなら実験してみる必要があるわね?クールタイムについて知っておく事は重要そうだしねッ!」


「く、クールタイム?なんかよく分からないが、うむ、必要ならば実験してくれ。ただ、痛いのは勘弁して欲しい」


「でも確かにクリスのデメリットを除いても、使い方に拠っちゃあチートよね?」


「ち、チート?なんだそれは?さっきのクールタイムといい、此の身には意味がよく分からないんだが」


「チートは反則級ってコトで、クールタイムは待機時間とでも覚えておけばいいわよ?」


「待機時間はなんとなく理解したが、此の身は反則なんぞしておらぬのだが?」


「ま、龍人族ドラゴニアがそもそも反則みたいなモンだからね。種族ガチャって、ヤツよ」


「しゃ、釈然としないのだが。それに種族ガチャ?更に分からない言葉が……」


「要するにね、最初から龍人族ドラゴニアは恵まれてるってコトよ。クリスもサラとレミを見たでしょ?あの2人は密猟の被害者。でも、あの2人が龍人族ドラゴニアの村で龍人族ドラゴニアとして産まれていたら密猟には合わなかったと思うの」


「そ、それはその通りだろうな。村は一度も被害に遭ったコトはないからな」


「それは認識阻害インヒビションの結界のお陰?確かにそれもあるかもしれないわ。でも、種族全体で密猟者と闘う力があるからよ。でも特にレミみたいな兎人族ラビティアは元から闘う力が無い種族。だから密猟の憂き目に遭ってるわ。その結果、家族と離れ離れになってる」


「そうだったな。確かに幼子が親元から引き離されるのは目に余る」


「えぇ、例えば猫人族キャティア龍征波動ドラゴニックオーラみたいな固有能力ユニークスキルを持ってる種族だったら狙われなかったかもしれないし、それは兎人族ラビティアでも同じよ。でも逆に龍人族ドラゴニアが闘う力を持ってなかったら狙われるのも事実よね?」


「うむ、確かにその通りだ。だから反則級な固有能力ユニークスキルという事か」


「えぇ、そうよ。どこに産まれるか、どんな種族に産まれるかは産まれてみないと分からないんだもの。それが運命とか天運とか呼ばれて、「はい、そうですか」って納得出来る人ばっかじゃないってコトよ!」


「それが種族ガチャなのか?」


「ま、そんな感じよ」



 2人が話しに夢中になっている間に、セブンティーンは既に屋敷の近くまで来ていた。


 陽の光は既に頂上にはなく傾き始めている様子で、空は青から少しばかりオレンジをトッピングに加えている頃合いだった。



「ところで、お昼ご飯は何かしらね?」

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