第47話 Rumbling Executioner Ⅲ
少女が廊下に顔を出して誰かを呼ぶと、レミが声に反応して「てってって~」とやって来たのだった。そのレミは頭にバイザーを装着していた。
だから少女は普通にレミの言葉が理解出来たし、レミもまた少女の言葉が理解出来ていた。こうして少女は
爺は広間にいた。広間で何やら物思いに
「お爺、あるじさまがお話しがあるって言ってたから、連れて来たよッ」
「おや?レミですか。ん?お嬢様ッ!?」
「お爺?流石はレミね。ってか爺、どうしたの?」
「いえ、何でも御座いません」
「おはようございます、お嬢様」
「ねぇ、爺。アタシの討伐
「は?何を仰っているのですか、お嬢様?」
「え?あ、うん、何でもない、何でもない。気にしないで忘れてッ!」
「お嬢様、それが当方に
爺は少女の顔を見るなり何やら一瞬だけ驚いた表情をしていたが、直ぐにいつもの表情に戻っていた。その後少女は自分の
「爺、話しを聞かせてもらえるわよね?」
「そうで御座いますね。当方が知っている限りの一部始終をお嬢様にお伝え致します」
「レミ、お嬢様に紅茶のご用意をお願い出来ますか?」
「はーい、お爺分かった!やって来る~」
「それにしても「お爺」ねぇ。なんか懐かれてるのね。ふふふ」
こうして爺は少女に対して自分が見たモノを、
然しながら途中まで話しを紡ぎ終えた爺は口を閉ざすと広間の天井を仰いでいき、間を置いてから再び
その後の爺の話しはダフド率いる
炎龍ディオルギア討伐の翌朝になると、爺は方々に段取りを取っていった。
先ずは炎龍ディオルギアの躯について。流石にこのままでは躯が傷んでしまい、素材が取れなくなる為に早急に手を打つ必要があった。
拠ってダフドから長老達に話しを通してもらって、サポーター達の侵入経路を確保した。
サポーター達は討伐対象の躯の回収をする際には、その大きさに拘わらず持ち帰れる素材は
然しながらセブンティーン同様に、虚理で編んだ空間を保有している特別仕様車を使って素材を運ぶので対象の大きさは問題にならない。
だからこそ問題になるのは
必ず車をそこまで到達させなけらばならない為に、「どうやって回収対象物まで行くか?」のルート選定が特に大変と言える。特に今回のような外界と隔絶された地域なら尚更の事だ。
拠って段取りに爺は奔らされた。そしてその件が片付いた時には既に太陽は傾き始めていた。
「先程、炎龍ディオルギアの
「それにしてもまぁ、中位の
「お嬢様はお身体に異常は御座いませんが今は意識はなく、お休みになられておいでです。ご心配をおかけ致します」
「意識が無いだけで無事ならそのうちひょっこりと目を覚ますだろうさね」
「ところで話しを戻すが、素材についてこっちの取り分は無いがハンターの取り分はある。こんだけバカでかいんだ、1割でも結構な量になる」
「意識が無いなら本人に確認のしようがないから代わりに聞くんだが、何が欲しいか分かるかい?分かるならドクに伝えておいてやるが」
「静岡国に送りつけなきゃならんから、あんまり猶予はないんだ。遅れただけで変な言い掛かりを付けられるとたまったモンじゃないしねッ」
「左様でございますか。お互いに難儀で御座いますね」
マムはこの神奈川国の国家元首である。拠って本来ならばマムには公安の関係者か所属するハンター以外から連絡を取る事は出来ない。
一般人が国家元首に対して連絡出来ないのは当然の措置と言える。
だが今回は例外措置として爺が報告をした。そもそも爺はマムの「知人」である事から連絡をする事に制限を受けているワケではないが、普段から別段意味もなく連絡はしない。
だから最初、爺からの連絡を受けたマムは訝しんだ。「何故本人からではなく爺からなのか?」と。
だがその解答の為に少女の意識が無い事を告げられると取り乱していた。
しかし結局のところ、無事に炎龍ディオルギア討伐が
やはり国家元首と言う重責は国民あってのものだから、マムなりに苦悩していたのかもしれない。
その後、暫く時間が経って今度はマムから爺に対して通話が入った。マムからの通話の内容は素材についてだ。
それは爺から少女の意識がないと聞いた事や、静岡国に対しての段取りなどの件から仕方なく掛けた様子だった。
爺は「何を作る」のに「何の素材」が「どれ程必要」なのかは正確に把握していない。だからマムに「何の素材が欲しいか分かるか?」と聞かれても困ってしまっていた。
然しながらそれは当然の事だった。
「マム様、当方にはお嬢様の欲しい素材が分かりませんが、お嬢様が欲しがっているモノならばなんとなくですが分かります」
「そういった注文では難しいでしょうか?」
「素材じゃなくてモノかい?まぁ、それならそのモノが分かれば必要な素材が分かるから結局同じだ。構わない。教えておくれ」
「はい。それではお応え致します。お嬢様は一振りの剣を欲しておられるように御座います」
「剣……か。だがどんな剣だい?剣にも色々な種類がある。
「どれがいいかアンタに分かるかい?」
「お嬢様の性格を考えれば
「あーーっはっはっはっ!!流石だなッ。なかなかの言い草じゃないかッ。流石は保護者だッ。よく見ているな、アンタッ!」
「恐れ入ります」
「じゃあ、炎龍ディオルギアの素材で
「左様でございますか。それでしたら炎龍討伐戦でお嬢様のハーフメイルが壊れてしまったようですので、替わりになる防具を造って頂ければと存じます」
「えっ?!あのハーフメイルが壊れたってのかい?それはどんな風にだいッ!」
「壊れ方次第じゃ身体に
「えぇ、恐らくはバストサイズを盛って造られていたのが幸いしたものと心得ております。お嬢様の悪知恵なのか、はたまた?」
「あ、あぁ、うん、それならば良かった良かった。うん、良かった」
「まぁそれならそれで素材の件はなんとかなりそうだ。武器と防具作成はドクにそのままオーダーしておくから数日もあれば出来るだろうさ」
「それでもまだ素材が余る様ならドクになんか造らせておくし、保管しておく事も出来る。だから一緒に受け取るといい」
こうして素材の件はなんとかカタがついていった。最終的にマムは捲し立てるように通話を切ったのだが、それはまぁ、バツが悪かったから……と言うのは察しが付くだろう。
実際のところ少女が身に着けていた
マムは少女を
だがこれが少女を救ったとも言える。
バストサイズが合っておらず、胸の部分にスキマが空いていた事が幸いしたのだ。
それに拠って炎龍ディオルギアの爪撃は少女を上下に両断する事がほんの少しだけ出来なかった。要はバストサイズを盛った事で、爪の長さが少しだけ足りなかったのである。
そもそも
だから言い様に拠ってはバストサイズが合っていても合っていなくても変わらなかったかもしれない。拠って爺は少女の
とは言え結果として、爪撃に因って重症は負ったが少女の身体は上下に泣き別れなかった。
もしも上下に泣き別れていたらそのまま即死していたかもしれないし、不思議な力で復活出来なかったかもしれない。まぁでも、どっちみち
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