不思議なカレラ ~Became a shooting star~

酸化酸素 @skryth

The Prologue Take

第1話 1st prologue


 時は統合暦2019年。


 そしてそれは今から60余年ほど前にさかのぼる。


 地球という惑星にいて第2次世界大戦が終結を迎え、焦土化した戦後の復興に奔走していた時代。

 生活を向上させる技術の発展に、そして繰り返される新たな戦争に邁進していた時代。

 各国が各々革新を求めて模索していた時代に起きた凄惨せいさんたる悲劇だ。



 当時は地球圏を廻る軍事衛星も無く精度の低いレーダーや軍事兵器といった、絶対にマンパワーが必要不可欠だった。

 だからこそ自動化や無人化など夢のまた夢の技術であってそんなモノが成立する影すら見せていない時代。

 その程度の技術力しか持ち得なかったそんな時代の地球に住まう人類が目にしたものは、一面の青い空一杯に広がる空よりもなお蒼い「もう1つの地球」とも言える「蒼い惑星」だった。



 人類がその「蒼い惑星」を認知した時には既にソレは地球の大気圏まで接近していた。とは言え、予め近付いて来ている事が分かっていたとしても何も出来なかったという事は言うまでもない。




 ソレは恋人が寄り添うように、まるで互いが互いを求め合う事がさも当然の事であるかのように惹かれ合い接近した。

 近付くにつれその慕情にも似た、まじわり結び付こうとするの勢いは増していった、

 こうして2つの「惑星」は衝突したかに見えた…。



 無論の言うまでも無い事。地球と同等の質量を持つ惑星が衝突したのであれば十中八九、地球とその惑星は宇宙の藻屑もくずとなり果てる。


 何故ならばその惑星の大地に住まう生命の全ては、その莫大かつ暴力的な衝突エネルギーを一身いっしんに受け取り跡形もなくなってしまうからだ。



 然しながら衝突した「蒼い惑星」は「」に衝突したワケではなかった。

 例えるなら「」に衝突したと言えるかもしれない。


 それは分かり易く言えば元々あった2つの「惑星」の表面上のテクスチャを、混ぜ合わせ融合させ衝突したのだ。そして、融合後に衝突は一方的何事も無かったかの様に終息した。


 拠って何の被害も無く、平和だったとも言えよう。

 再三繰り返すが……である。




 その衝突について喩えてみるとしよう。それはビルが立ち並ぶ繁華街の真横に中世ヨーロッパの王城が突然現れる…といった感じのそんな「融合」だ。


 その「融合」は空気をいちいち読んでくれる事はしなかった。

 拠って「地球」と「蒼い惑星」の同座標上にあるものテクスチャ全てに対して例外なく上書き保存をしていった。


 要するに建造物や動植物などがあったとしたら、上書き保存される形で融合したのである。




 戦争中に焦土となり何も残っていなかった地域は被害が少なかった。今まさに戦争をしており現在進行形で焦土となっている途中の地域は被害が多少あった。

 未開の地などについてはその「融合」における被害はほぼ皆無だった。


 焦土の上に「蒼い惑星」上の建造物が上書き保存されても、被害は建造物の基礎部が破損する程度だったからだ。



 だが一方で既に復興を終えていた地域は被害が大きかった。

 第2次世界大戦に於ける元々の戦勝国や中立国といった戦争被害が元から少なく大地の上に建造物のあった地域は被害が甚大だった。




 「蒼い惑星」側に建造物などが無く、被害が無かった地域もあった事にはあった。しかし、どちらにせよ良い意味でも悪い意味でも目立つのはだった。



 そして更に付け加えるならばその被害は、建造物だけではなく動植物にも起きた。


 人類・動植物含むその他全ての生命体も一様に例外なくテクスチャとして判断され、「蒼い惑星」の同座標上にいたソレらテクスチャと強制的に融合させられる結果となったのだ。



 同座標に建造物があれば建造物と融合

 同座標に大樹が生えていれば大樹と融合

 そこに人がいれば言わずもがな……だった。


 よって大地は凄惨たる有り様であったのは言うに難くない。



 無論の事だが地球上に張り巡らされていたライフライン及び通信網は全て分断されてしまった。

 拠って情報・エネルギー・水・食糧の確保に至るまで困窮こんきゅうせざるを得なくなったという事もまた自明の理である。

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