第50話 ルセフ兄妹レベル30

 カノン達は冒険者ギルドに到着した。

 ディランからパーティ申請書を受け取り、兄妹の名前を記入した。

 すると、見習い冒険者二人のステータスが見えるようになった。

 カノンの中では兄妹はパーティ仲間ではなく、道具扱いのようだ。


【名前=カノン・ネロエスト 種族=人間(女) 

 レベル=30(最大レベル) HP=720/720 MP=320/320

 力=24 体力=24 知性=28 精神=32 器用さ=20 素早さ=20】


【名前=ジャン・ラシュリー 種族=人間(男) 

 レベル=1(必要経験値0/10) 損傷率=0% HP=390/390 MP=114/114

 力=18 体力=18 知性=15 精神=15 器用さ=16 素早さ=15】


【名前=シリカ・ラシュリー 種族=人間(女) 

 レベル=1(必要経験値0/10) 損傷率=0% HP=403/403 MP=114/114

 力=16 体力=16 知性=17 精神=15 器用さ=18 素早さ=18】


「うわぁ……リーダーのくせに弱すぎ」

「お兄ちゃんは、私よりも頭悪いじゃん」

「冒険者は力があればいいんだよ!」


 憧れの上級冒険者のステータスを見て、兄妹がショックを受けている。

 子供達の夢が、偽者の上級冒険者に容赦なく壊された。


「配達に力は要りません。それに本気出したら凄いんですよ」

「あっ、そうだ! 武器くれよ! 上級冒険者なら凄い武器持ってるだろ!」

「武器なら私も欲しい! お兄ちゃんよりも凄い武器ちょうだい!」


 弱いリーダーの言うことは誰も聞かない。兄妹は武器を要求した。

 でも、リーダーの言うことを聞かないと武器は手に入らない。


「駄目です。今からレベル上げです。武器図鑑があるから移動中に決めてください」

「やったぁ! 絶対に剣しかないな!」

「馬鹿だなぁ、お兄ちゃんは。大きい魔物に潰されちゃうよ。絶対に弓だよ」

「ばぁかー! お前の矢に当たるなんて魔物なんていないだよ」


 カノンは万能武器図鑑を兄妹に一冊ずつ渡した。

 頑張ってレベル30になれば、選んだ武器を作ってあげる。

 喧嘩している兄妹を小型飛行船に乗せて、岩山の氷フライム牧場に向かった。


「とりあえずこの杖を使ってください」


 遊んでいる時間はないので、神火の弾杖を二人に渡した。

 氷フライムが住む豪邸に、三人で極大火爆弾を集中砲火する。

 氷フライムを丸焼きにして、あっという間にレベル30だ。


「ぎゃああああ~‼︎ フラーッ‼︎」

「これがお前達のやり方フラかぁー‼︎」


 燃え盛る豪邸の中で、氷フライム達が叫んでいる。

 残念ながら、フライム語は人間には分からない。

 いつも通りに十数匹だけ残して、こんがり焼けたミノタウロス肉を与えた。


「お姉ちゃん、私この杖が良い」

「ふんっ。女はすぐに浮気するな。姉ちゃん、俺は魔法の剣にするぜ。凄いの頼むぜ」

「はい、杖と剣ですね。配達を頑張ったら防具も選んでいいですよ」

「なっ⁉︎ 何だよ、それ⁉︎ 聞いてないぞ!」

「装飾品図鑑もあります」

「あっ! 私、宝石の付いた腕輪が欲しいー!」


 カノンは三人姉妹の末っ子だが、年下兄妹の扱い方が分かってきたようだ。

 とりあえず物で釣ることを覚えた。

 防具図鑑と装飾品図鑑を見せて、食いついて来た兄妹を釣っている。


【名前=ジャン・ラシュリー 種族=人間(男) 

 レベル=30(最大レベル) 損傷率=0% HP=966/966 MP=283/283

 力=45 体力=45 知性=36 精神=36 器用さ=39 素早さ=36】


【名前=シリカ・ラシュリー 種族=人間(女) 

 レベル=30(最大レベル) 損傷率=0% HP=1000/1000 MP=283/283

 力=39 体力=39 知性=42 精神=36 器用さ=45 素早さ=45】


 兄妹がレベル30になって、カノンは軽々とステータスを追い抜かれた。

 装備まで与えたら、もうリーダー交代するしかない。

 だけど、カノンはジョブまで与えるつもりだ。


「そうです。今から教会に行きませんか? パトラッシュもジョブを貰えたんです。二人も貰えますよ」

「本当か? 兄ちゃんは15まで無理だって言ってたぞ」

「パトラッシュは3歳ですよ。14歳なら楽勝です。二人も貰いましょう!」

「わぁ~い! 私、良い子にしていたから、凄いジョブ貰えるよ!」


 カノンは二人がジョブを貰えると自信があるようだ。

 疑っているジャンと喜んでいるシリカを連れて、教会に向かった。

 前と同じように大金貨を渡して、祈りの間の神父には目を閉じて瞑想してもらった。


「ほら、何も起きないじゃないか!」

「お姉ちゃんの嘘つき」

「あれぇ~? おかしいですね。二人とも何か悪いことしたんじゃないですか?」


 だけど、祈りの間で神様に二人はお祈りしたのに、まったく反応がなかった。

 カノンは首を傾げているが、当たり前だ。パトラッシュは3歳だが、人間の歳で28歳だ。

 パトラッシュではなく——パトラッシュさんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る