第49話 配達員勧誘・ルセフ兄妹
ウェインの家は知らないので、カノンはルセフの家に向かった。
上空から庭を見下ろすと、暇そうにしている兄妹二人を見つけた。
「え? お兄ちゃんッー‼︎ 魔物だよ‼︎」
「なっ⁉︎ シリカ、家の中に逃げるぞ!」
「きゃああああ! お母さぁーん!」
妹のシリカが地面に現れた影を見つけて、上を見上げて叫んだ。
金色の飛行船が庭に降りて来ている。
次男のジャンが妹の手を掴んで、家の中に急いで逃げた。
「うーん、可愛い形に変えた方がいいですね。猫にしますか」
飛行船を庭に着陸させると、カノンは扉を開けて地面に着地した。
家から兄妹に連れらて、剣で武装した母親のニコラがやって来た。
「あらあら。あれは魔物じゃなくて、カノンちゃんよ。倒せそうだけど、倒したら駄目なのよ」
「ええ! 兄ちゃんがあの女は悪者だから、近づいたら駄目だって言ってたよ。倒してもいいんだよ!」
「本当に倒していいなら、お兄ちゃんが倒しているでしょ。カノンちゃん、どうしたの?」
過激なジャンがニコラに倒すように言っているけど、そのつもりはないようだ。
カノンに家に来た理由を聞いている。
「上級冒険者になったので、ルセフさんにお仕事を頼みに来たんです。まだ帰ってないんですか?」
「ごめんなさいね。泊まり込みで遠くまで行ったの。二、三日は帰って来ないかもしれないわね」
「そうですかぁ……」
金色の金属板を自慢するように見せて、カノンはニコラに聞いた。
ニコラが話しているが、兄妹の視線が金色の冒険者カードに集中している。
「凄えー! 上級冒険者なんて初めて見た!」
「わぁー! お姉ちゃん、ルセフお兄ちゃんよりも強いんだね!」
ニコラの後ろに隠れていた兄妹が飛び出した。
カノンの目の前まで近づいて、瞳を輝かせて聞いている。
「いえいえ、ルセフさんの方が強いですよ。ニコラさん、ウェインさんのお家を知りませんか?」
「ええ、知っているわよ。でも二股は駄目よ」
「二股ですか? いえいえ、してませんよぉ~。二人とは友達ですよぉ~♪」
「あらぁ~。それはそれで残念ね。まあ、下級冒険者じゃ仕方ないわね」
ニコラに聞かれて、カノンは意味が分からなかったが、理解すると笑って否定した。
完全な友達宣言にニコラは母親として、ちょっとだけ残念がった。
「ウェインさんだけだと、全然足りないですね。誰か他にいないでしょうか?」
ウェインの住所を教えてもらったが、配達員が一人増えただけだ。
知らない人に頼んだら、荷物と飛行船の両方とも取られそうだ。
誰か信用できる人がいないかと探したら、目の前にいた。
「ニコラさん、配達の仕事しませんか?」
「ごめんなさいね。家の仕事があるから無理なの。誰か紹介しましょうか?」
「母さんが出来るなら、俺だって出来るよ。俺がやるよ!」
「お兄ちゃんがやるなら、私もやります!」
ニコラには断られたが、兄妹がやると言い出した。
14歳と13歳なら、大人と言えなくもない。
でも、スキルもレベルもないなら危険そうだ。
「えーっと、子供はちょっと……」
「お前の方が子供だろ。チビ女!」
「そうだよ、ペチャパイ!」
「女の子は小さいのが当たり前なんです」
カノンが断ろうとしたら、兄妹から恐ろしい精神攻撃が飛んで来た。
でも背は小さい方だが、胸は平均よりも少し大きい方だ。
カノンはまったく気にしていない。
「いいからやらせろよ、ハゲ女!」
「ハゲてません! セミロングです!」
だけど、髪は我慢できなかったみたいだ。
金貸しに切られて短くなった髪を言われて、怒ってしまった。
弱点を見つけた兄妹が、何度もハゲ女と言い始めた。
「うるせい、ハゲロング! 配達やらせよぉー!」
「そうだぁー! ハゲロング、ケチロングぅー!」
「むぅー! そこまで言うなら後悔しても知りませんからね!」
「「イェーイ♪」」
プルプル震えて怒っているカノンが、兄妹に配達させると言った。
兄妹は手を叩いて喜んでいるが、カノンは大人の怖さを教えるつもりだ。
氷スライム牧場に連れて行って、エサやり体験だ。
「配達するなら、私のパーティに入ってもらいますからね。リーダーの言うことは絶対なんですよ」
「はいはい、分かりました。肩でも胸でも揉んでやるよ。あ、胸は揉むほど無いか!」
「むぅー!」
「お兄ちゃん、駄目だよぉー。凄く怒っているよ。胸だけはあるんだから、失礼だよ」
「むぅ~~‼︎」
どっちも失礼な兄妹だ。
飛行船の後ろに兄妹を乗せると、カノンは冒険者ギルドに向かった。
まずは見習い冒険者になってもらって、パーティ申請書に署名させる。
その後は生意気な見習い冒険者二人を、上級冒険者としてビシバシ教育だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます