第4話 ボロ服修復

「お待たせしましたぁー」

「別にいいよ。どんなジョブだったんだ?」


 教会の中の長椅子に座って、青年はカノンを待っていた。

 カノンがやってくると立ち上がって、ジョブの能力を聞いた。

 戦闘向き、非戦闘向きで冒険者に向いているのか分かる。


「あー……壊れた道具を修復できるみたいです」


 カノンはうろ覚えのスキル2の能力を答えた。


「道具の修復なら職人系だな。壊れた物を安く買い取って高く売るか、道具の修復代で稼げる。とりあえず着ている服を修復してみろよ」

「はい、分かりました。どうやればいいんですか?」

「はぁー、本当に何も知らないんだな」


 青年は手頃なカノンのボロ服で、能力を確認することにした。

 スキルの使い方も知らないカノンに、呆れながも丁寧に教えていく。

 家族や周囲にスキルが使える人間がいれば、普通は興味を持つ。


 HPとMPは空腹や満腹、怪我や疲労によって、上昇と減少を繰り返す。

 HPとMPが0になると気絶してしまう。

 そして0状態が長時間続くと、死亡する危険がある。

 青年がスキルを使いすぎないようにと、キチンとカノンに注意した。


【名前=ボロシャツ(半袖茶色) 種類=防具(服) 

 レベル=1(必要経験値0/10) 進化レベル=3 損傷率=72% 

 防御力=1 魔法防御力=0 その他の効果=臭い】


「あっ! 見えました!」


 青年に言われた通りにボロシャツに触ると、ボロシャツのステータスが見えた。


「だったら次は修復——直れと念じればいい。MPに気をつけて倒れるなよ」

「はい。直れ直れ直れ……」


 心で思うだけでいいのに、カノンは言葉に出している。

 ところどころに小さな穴が空いていたボロシャツが、見る見る綺麗になっていく。

 身体の傷が治るように、穴が塞がり、汚れた茶色から、布本来の落ち着いた茶色に変わっていく。

 MPを7消費して、ボロシャツの修復が終わった。


「わぁ~♪ 新品になりましたぁ~!」

「道具専用の回復魔法みたいだな。修復道具が要らないから、修復屋でも開けば生活費ぐらいは稼げるだろう」


 ボロシャツが新品になって、カノンは喜んだ。

 青年の話を聞きながら、ボロの半ズボン、ボロ靴も修復した。

 茶色服全体の防御力が6まで上昇した。


「MPは飯を食って休めば自然回復する。MP回復薬は高いから、高価な道具の修復代で稼ぐのが基本だな」

「装飾品とかですか?」

「ま、そんなところだな。武器屋とか防具屋とか回って宣伝すればいい。だけど高価な道具は、MP消費が激しいかもしれない。冒険者ギルドの訓練所で、レベル上げした方が良いかもな」

「レベル上げですか……?」

 

 教会から武器屋に向かって、話しながら歩いて行く。

 世間知らずのカノンの代わりに、青年がどうしたらいいのか教えている。

 レベルが上がれば、ステータスのMPも上がる。

 MPが上がれば、修復できる数も増えるから収入も増える。


「ここが武器屋だ。店主に話を聞いたら、冒険者ギルドで冒険者登録するんだぞ」

「はい。ありがとうございます」

「じゃあ、頑張れよ」


 木板の看板に剣が彫られた武器屋に到着した。

 青年は冒険者の仕事があるから、カノンとはここで分かれる。

 カノンは丁寧にお辞儀して青年を見送ると、武器屋に入った。

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