ヒロインとくっついた後ってどうすれば良いですか?

上野蒼良@作家になる

第1話 私、メインヒロインなんだけど!

 季節の変化を感じる寒さと熱さの両方を感じる風の舞う雲一つない美しい夕日に照らされた日の事だった。……それは、文化祭の後。生徒達が、達成感と喜びに包まれて帰宅を始めたり、共に頑張って来た仲間と何処かへ食べに行ったり……はたまた、気になる異性に声をかけてみたり。それぞれの青春の一ページが何色にも何ページにも刷られていく中で、神谷葵は、今世紀最大級にして最上級にして、アルティメイタムな瞬間を見せられてしまう。



ゆかり……。おっ、俺! 俺ぇ!」


 それは、まさに完璧なアカデミショー級ハリウッド映画のワンシーンのようなロマンティックでドキドキな沈む夕日の中での出来事。大きな校舎の影が、彼らをうまい具合に影で覆う。――そして、季節の変化を呼ぶ強い風が吹き出した瞬間に彼は言うのだった。



「……俺! 好きだァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ! あいしてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!! 本気なんだァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ! どうか、俺と付き合ってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」



 風は、彼のセリフが終わった途端に吹くのをやめてしまう。これで、まだこの季節は続いたままなのか……そう思わせるような、油断させるような風が吹いた後、2人の事を影となっている部分からこっそり見ていた葵は、ガタガタと震えながら2人を見ていた。しかし、風が止んだ事を知って何処か謎の余裕ができる。まだ、言っただけ。勝負はまだ始まったばかりだ。と、彼女は何処からか自信を手に入れる。


 ――そっ、そうよ! 調べによると男からの告白に女がのる確率はすっごーく低いみたいじゃない! だったら今、別にショックに思う必要なんてないわ!







 だが、それが甘かった。彼女は次の瞬間、隙あり! と誰かに心臓を刺しこまれたような感じを次のセリフに覚える。





「……はっ、はい! よっ、喜んで…………」


 瞬間、こっそり見ていた葵の頭の中で”I Don`t Want To Miss A Thing”の有名なサビのメロディーがかかる。

 彼の前に見える少女の頬は、真っ赤だった。そして、喜びのあまりか目線は全く男の方を向いておらず、瞳があちらこちらを泳いでいた。――それでも、少女は今の自分の気持ちを正直に一言簡潔にそう言ったのだった。






「…………」


 一連の流れを隠れて見ていた葵は、刺されたような痛みを堪えながら豊満な膨らみと膨らみの間に手をがっしりと当てながら、フラフラ……と足音を立てながら歩き出した。それは、まるで時代劇に出てくるやられ役の侍のようななんとか戦場から帰って来たよ母上……。と言いたげな雰囲気で葵は、戦場ヘルから帰還してきたのだった。


「…………」


 彼女の目に光はない。それは学校の校舎の影のせいでそう見えるのもあるのかもしれない。けど、違う。それだけじゃない。彼女自身がもう既に大変な状態だった。



 ――かつ、かつ…かつ



 足音に一定性がなくなる。手は、ぶらんと力尽きたような感じでフラフラしており、まるで人の手が入っていない時のパペット人形を振り回したかのようだ。そのまま彼女は、学校の中へと入って行った。



「京介! これから飯行こうぜぇ!」



「おっ! 良いね~。行こ行こ!」



 賑やかな男子達の声が、聞こえてくる。



 ――あんな幸せもあるんだなぁ……。



 彼女は、首を彼らの方へ傾ける余力もなかったので、下を向いたままそう思った。




 ――かつ…かつ、かつ……かつ





 真っ直ぐ廊下を進んで行くと彼女の真横に階段が出現する。それをゆっくり……ゆっくりと……彼女は昇っていく。この時の葵の姿を目撃した人がもしもいたとするなら、きっと彼らはこれを後日学校の会談にするだろう。それ位、彼女は下を向いてだらんとした感じに階段を上っていたのだ。



「……ちょっとぉ~舞ったら張り切りすぎ~」



「えぇ~、だってー。これから後夜祭でしょ~。マジ楽しみじゃん!」




 ――ウフフッ、お若いねぇ。近頃の若い子は、あんなに……早く階段を下れるんだねぇ……。




 ちなみに彼女も高校生である。











 ――そうして、葵はなんとか長い長い階段を上り終えた後にようやく、辿り着けたのだ。誰もいないトイレの個室に。





「……うっ、うぅ…………」



 彼女は、バタンとトイレのドアを閉めると意味もなく2、3回程、トイレの蛇口を力いっぱい押し込んで水を流し続けた。



 水の勢いのいい流れる音が、トイレ中に響く。――だが、そんな音が鳴っていても彼女の心までは流されない。葵は、それからも何度も何度も水を流し続けた。







 しかし、次第に水の流れるあの音はしなくなり、ただ便器を伝う滝のような音だけがするようになり、そうすると彼女はもう水を流さなくなった。

 流さなくなった代わりに、葵は便器の中を覗き込むような態勢で蓋の裏にある銀色の蛇口に手を伸ばしたまま、流れる水と一緒に溢れ出す涙を下水に流し込んだ。




「……なんでよ。…………なんで……なんで…………」



 彼女は、心の中に詰まった気持ちの悪い塊を思いっきり吐き出すような感じで叫んだ。
























「……メインヒロインは、アタシなはずでしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉオオぉぉぉぉぉぉオオぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぃぉィィぢ時オオvjjふぉdびふぁんびpfj冷えf日fン部ffンfdンvjンvjんヴィdヴィふぁmvkンvkmvfだmkvmんふぁkmvだfkvマdkmvふぁmvfkmvfmvflmvkmvkmvfkmヴkfjふぇじおびfjびおjびjぼおびbじいfしjふぃいじfにじびtじbtじjびtじskびvじふぉふぇうういrぐいbbfりにfbmりんvふぁえjみsんvfsjbそヴぉ」





















 ――仰るとおりである。

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