陰キャの俺が屋上でフリーハグ始めたら高校の美少女たちとイケナイ関係になった件。〜肌を重ねて抱きしめ合っていいんすか?〜
星野星野@電撃文庫より2月7日新作発売!
フリーハグで学園の美女を抱きたい01
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックをご存知だろうか?
「ねぇ
「面倒だし、嫌だ」
「じゃあ、名前を置いておくだけでもいいからさ、心理学実験部入って?」
「えぇ……」
「お願い〜、名前だけでいいからぁ〜」
「ま、まぁ、名前を置いておくだけなら」
という感じで、先に高い要求をされると、その後にハードルを下げた要求がやけに簡単に感じてしまい、つい了承してしまう。
これがドア・イン・ザ・フェイス・テクニックである。
人の心理とは不思議なもので、それを交渉術に用いると、本来頼もうとしていた物事を簡単に相手へ受け入れさせることができるのだ。
実際に俺、
しかもこの同好会ってのは俺とゆのだけしか会員がおらず、ほぼ存在していないのと同じ、お遊びみたいな同好会。
ゆのは頑なに"心理学実験部"と自称しているが、正式には"心理学実験同好会"であり、部に認定されるだけの大層な活動もしていないし部員もいない。
「はぁ……やっと帰りのHRが終わった」
さてと、今日も今日とて我らが心理学実験同好会に行くとしようか。
帰りのHRが終わったら、心理学実験同好会の活動場所である『屋上』へ足を運んだ。
「んー? これでいいよね」
俺より先に屋上に来て、小さいホワイトボードに何かを書きながら、青空の下、熟考する女子生徒が一人。
彼女こそ、学年1の秀才にして学年1おっぱいが大きいことで有名な桔川ゆの女史。
胸だけでなく、その甘ったるい声質とのんびりとした超垂れ目が特徴で、クラスでは癒し系ヒロインのポジションを確立している。(幼馴染の俺の前だとただウザすぎるエセ心理学者なのだが)
「おーっす」
「あ、孔太くん!」
ゆのはこちらへ大きく手を振る。
手を振りながら上下に揺れる彼女の胸。
たゆんたゆんという擬音が似合い過ぎて、ここから今すぐにでもルパンダイブしたい衝動に駆られる。
「もー、なかなか来ないから、サボったのかと思ったよ!」
「来ないとお前、鬼電してくるだろ」
「これは部活動なんだから当然でしょ? わたしは心理学者として、孔太くんに鬼電することで孔太くんの行動心理を操っているのー」
「はぁ?」
心理学とか関係なく、鬼電をくらったら、誰だって文句言いに来るっての。
ゆのは俺の怒りなど気にも止めず、立ち上がって高々と宣言する。
「本日から我々! 心理学実験部が新たな一歩を踏み出すために! とある心理学実験をしますっ!」
「心理学実験?」
「うん! 今まではお金がないから、奉仕活動ばっかりしてたけど、それはもうお終い! 私たちは奉仕活動をしたことによって、この屋上を手に入れた。つまり! 自由な実験を行うための準備は整った!」
「あと一ヶ月もしたら真夏になるこの屋上で実験……? 虫眼鏡に陽光当てて、紙を焼く実験とかすんのか?」
「そんな小学生の理科みたいなことはしません! 私たちがするのは、これだっ」
ゆのはベス●ハウスの1-2-3ボイスを口ずさんで、ホワイトボードを俺の方へ向ける。
「じゃじゃんっ! 名付けて【フリーハグ実験】です!」
「中身をまったく説明してないのに勝手に名付けるんじゃあない」
「ありゃりゃ中身を説明するのが先だった。こりゃうっかりうっかり」
ゆのはカバンから一枚の印刷用紙を取り出して俺に渡す。
「暇すぎて喉を掻き殺す勢いの孔太くんのために! これから毎日、孔太くんにはここでこのホワイトボードを首に下げながらフリーハグをしてもらいます」
「……は?」
こいつの言ってる意味が理科できん。
フリーハグ? 毎日?
なんでそんなトンチンカンなことを俺がやらねばならないのだ?
「ノーコストの心理学実験をする上で必要な条件は、簡単にできて特別な用具を必要としない事! だから、ここで今すぐにでもできる"フリーハグ"というフィールドワークに、わたしは目を付けました!」
余計なもんに目をつけるなよ……。
「人はなぜフリーハグをするのか、何を求めているのか、その理由を解明するの!」
「そんな調査をする価値も理由もわからないし……何より、フリーハグなんて嫌なんだが」
「嫌は禁止でしゅー。もう決定事項なんでしゅー」
「何の断りもなく勝手に決めるなよ! こんなクソあちぃ屋上に俺を座らせて挙げ句の果てにフリーハグとか! 頭いかれてんのか⁈」
「へー。文句言うなら孔太くんが卒アルの私のページでスコスコしてるのみんなに言いふらすよー?」
「なんでそれ知ってんだ……まさか、母さんに聞いたのか⁈ おい!」
「えぇ。冗談で言ったのに…………きも」
「……し、してねーしっ。してたとしても、女担任のページだしぃ」
「ねぇキモいからとりあえず心理学実験はやって」
「最悪な流れで無理矢理ねじ込むな! なんだよキモいからって! 理由が意味不明なんだよ!」
「孔太くんは暇人なんだからやるの! ほらさっそく今から始めますっ」
「ったく……暴君かよお前」
俺は言われるがまま、ホワイトボードに付いていた紐を首に通し、『フリーハグやってます』という文字を胸元に掲げて屋上の真ん中に座り込んだ。
屋上はいつも
たまに数人来るくらいなのだが、今日だけはこの屋上を封鎖したい気持ちでいっぱいだ。
フリーハグを開始して5分後。
女子生徒2人組が屋上に来てしまった。
茶髪の巻き髪にバチバチにキメこんだメイクとネイル。
うわ、まさかのギャルコンビかよ……。
「ん? なんあれ?」
ギャルの一人がその長いネイルで俺の方を指差す。
み、見るな……! どっか行け!
「ウケる。とりま裏チャにあげとく?」
「あぁーいいね。そーしよか」
野次馬二人が俺の無様な写真をスマホのカメラに収め、すぐに屋上から出ていった。
「なあゆの……あの2人、裏チャがどうとか言ってなかったか?」
「…………」
「おい!」
「ご、ごめん孔太くん」
「は?」
「
ゆのがスマホを見せてくる。
そこには、俺をばっちり写した肖像権とか無視しまくりの画像2枚が投稿されており、グループチャットに俺が晒されている。
おいおいおいおいおいおいおい!
これって、デジタルタトゥーになって一生ネタにされるやつだろ!
「さよなら平穏マイライフ……」
「これはチャンスだよ孔太くん! この写真を見て、フリーハグを求める学生がバンバン来れば調査の母体数も増えるし、最高じゃん!」
……終わった、俺の高校生活。
✳︎✳︎
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