今君に贈る最期の花言葉

東雲 南丫

この花言葉を君に...

「最後だしカラオケ行こうぜ。」

「良いね。思い出作りに行こうか。」

「賛成!」

 等々、様々な言葉が交差する教室内。

 今日は卒業前の最終日として昼前に授業が終わり、休日のようなムードになっていた。だがやはり、別れが寂しいのかいつもよりその騒がしさはない。

 そんな中俺、「秋乃入あきの しお」は一人どこか落ち着かない様子で自席に座っていた。

 その理由は昨日に遡る。

 俺に唯一関わっていた同級生の少女に今日の夕方頃、近くの花園に来るよう呼ばれて居るからだ。

 学校最終日、そして、『俺の好きな人』であることから、とても緊張していた。

 元々は俺から彼女へ告白するために呼び出そうとしていたが、彼女が大事な話があると言うのでそちらを優先した。

一体なんの話なのか、それが不安だ。


夕方の7時頃、俺は色とりどりの花が咲く花園へ来ていた。

俺を呼び出した少女はまだ居ない。

いつ来るかを心待ちにしていた時、

「ごめん、待った?」

その時が来た。

俺を呼んだ本人で、俺の好きな人が来た。

「いや、今来たところだ。」

そう返す。

「そっか。」

そう言って、少女は笑った。

でもなぜかその笑顔は何処か寂しそうで、

どこか切ない表情だった。

その表情に少しの不安を覚えるが、

先に彼女からの話を聞くことにする。

「実はね、今日呼び出したのは、」

そこで少女は言葉を止める。

「実は、お別れをしに来たの。」

その言葉により、思考が停止する。

「お別れの言葉を告げに。」

そこから、理解するのを頭が拒んだ。

何故?何故彼女は、別れを?

理解出来ない。

戸惑う俺に、少女は告げる。

「実はね、私、病気なんだ。小さい頃からある、不治の病なんだって。

それでね、四年前、病気が悪化して、余命三年って言われたの。」

三年前。

それは、丁度俺たち二人が出会った時期だった。確かに、彼女を最初学校で見てはいなかった。それにより友達を作ることを遅れた彼女と人と話すのが苦手な俺、

その二人で意気投合して友達になった。

「それでね、最期の思い出に、学校に行こうと思ったの。そこでね、貴方と出会った。私は最初、学校で友達を作ろうと思わなかった。理由は、直ぐに居なくなってしまうから。そして、既にグループが出来上がっているからという建前。

でも、そんな私に話し掛けて来た貴方。

直感で仲良くなりたいって、思ったの。

思ってしまったの。それで、そのまま貴方に何も言えずに三年。余命より一年も長く生きてる。奇跡なんだよ。だからさ、

貴方へのお別れ、そして謝罪。

でも、もう一つ、言わせて欲しい事があるんだよ。」

彼女の言葉を何も言わずに聞く僕。

だが、それ以上は聞きたく無かった。

だが、彼女の言葉だから、

耳が勝手に聞き入れてしまう。

「それはね、」

その言葉に、しっかり耳を傾ける。

「告白。」

そして唖然とする。

「そう、告白。貴方の事が好きだった。貴方と過ごす内に、気づけば好きだった。

好きになってしまった。」

その言葉に、何も返せなかった。

「でもね、返事はしないで欲しいかな。

私は悲しくなるし、貴方も辛くなる。

いきなり友達が消えるからね。

返事がOKだったとしたら、

もっとつらいからね。」

「そうか。じゃあ、返事はしないぞ。」

表情を動かさないように話す。

「うん。それでいい。でね、二つ。

プレゼントをあげる。

私の事を忘れないで欲しいから。

私が生きたという証拠を持っていて

欲しいから。」

そう言って、彼女は花園の中から二つの花を渡してきた。

「これはね、翁草オキナグサって言うんだ。これには花言葉が色々あるんだけど、私からは、

この意味を贈る。『何も求めない』

だから。良いんだよ。何も思わなくて。」

そんな事を言わないでくれ。

そう思っても、言葉に出せなかった。

彼女の言葉を遮る事になってしまうから。

「でね、もう一つ。こっちはカランコエ。

小さい花が沢山あって可愛いでしょ。

こっちの花言葉はね、

『沢山の小さな幸福』

貴方と出会えたこと。貴方との思い出。

その全てが、私には幸福だった。」

表情が動きそうになる。

「だからさ、入、さようなら。」

言葉につまる。だが、これだけは言わなければならない。だから言う。言ってしまえば最期になるから。時間をかけて。

「ありがとう。さようなら。」

私の大好きな人。

その言葉を最期に。彼女は去っていった。

最期の彼女の表情は、今にも泣きそうな顔だった。

だが、今、俺の顔は、どうなっているだろうか。彼女の話を聞き、彼女に告白する予定だった。だが、できなくなった。

それを、今だけは泣かせて欲しい。

彼女。「夢与玲ゆめよ れい」を想って。



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後書き

この物語を読んでくれて

ありがとうございました。

初心者なので物語の矛盾等があるかもしれませんがご了承下さい。

改めて、ありがとうございました。

最後に一つだけ。

「翁草」の花言葉には、

こんなものもあります。

『告げられぬ恋』

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