第79話 ブルーノ視点3 王妃に似ていない娘が、王妃そっくりな人形を出して攻撃されました
学園では、その娘のアンネローゼが滞在する領地の娘を手なずけていた。
なんでも彼女のたった一人の肉親の父が、アンネの侍女とその娘を構いすぎるのが気に入らないのだとか。
学園の裏門から、その娘の手引で学園の中に入った。警備の兵士はあっさりと眠ってもらった。
まあ、元々滞在していた学園だ。勝手は知っている。20年ぶりだと言ってもそんなに変わってはいなかった。
雷が鳴り、大雨が降って来てはいたが、まあ、俺の人生みたいなものだ。
女子寮に向かうと、私の視線が赤毛を捉えた。
「ギャッ、ゆ、幽霊よ」
赤毛の横の女が叫んでいる。
赤毛が
「カリーネ様」
俺の横の女を見て言った。
「ブルーノ様。彼女がアンです」
女が教えてくれた。
「その方がアンネローゼか。アンネとは似ていないのだな」
俺の素直な感想だった。もっとアンネに似ているかと思ったのだが、全然似ていなかった。似ているのは赤毛だけだ。
アンネはもっと美しくて、その瞳は輝いていて、もっと魅力的だったのだ。
俺はがっかりした。
「水よ出でよ!」
俺ががっかりしている間に、赤毛の横の娘が水魔術を私に浴びせようとしてきた。
私はため息を付きたくなった。そんなのが私には効くわけはない。
私は障壁で防ぐと、衝撃波でその女を弾き飛ばした。
それを見て赤毛の娘は逃げ出したのだ。
私は女に興味を無くしていたが、逃げると追いかけたくなるのは習性なのか? 犬ではないと思いつつ、追いかけていくと、目の前に懐かしい顔があった。
元クラスメートのエレオノーラ・ルンドだ。
同じスカンディーナの出身で、昔は一緒に勉強や魔術の訓練をした仲だった。
たしか、政変の後、この国に来ていたはずだ。
俺は懐かしかっただけなのだが、エレオノーラは違ったようだ。
「ウインドカッター!」
俺が何もしていないのに、魔術を私相手に繰り出してきたのだ。
障壁で防いで、エレオノーラを衝撃波で弾き飛ばす。
間違えてアンネを殺してから、私の人生は狂ってしまったのだろう。
もう、友など、どこにもいないのだろう。
「もう許さない」
アンネの娘はそれを見て切れていた。なんか瞳がその父親のオスヴァルドを思い出させていた。
嫌な思い出だ。俺からアンネを奪った男だ。
俺は嫌なことを思い出した。
「ウィンドウストーム」
娘の手から凄まじい突風が俺に襲いかかったてきた。さすがにアンネの娘だと思った。ここまでの力を持つものは、スカンディーナにも5人といないだろう!
しかし、それだけだった。私が反射で返すと娘はぼろ屑のように飛んで行った。
またやってしまった。アンネの時と同じだ。俺は攻撃されたら反射で返してしまうのだ。条件反射だった。娘は死んだだろうか?
近付くと娘が身動ぎするのが見えた。良かった。アンネの娘を殺さなくて。
この娘を連れて帰って仕込むか? 少しは見込みがありそうだし。おろかな息子どもに王位を継がす必要もなかろう。俺がそう思案していた時だ。
娘が何か呟いた。すると目の前になんと夢にまで見たアンネが出現したのだ。
俺は唖然とした。
「あ、アンネ様!」
そう、そこには俺が恋い焦がれていた小さなアンネ王妃が立っていたのだ。
そ、そんなバカな。
アンネは気品溢れた装いで、ゆっくりと私目指して歩いてくる。しかし、アンネは娘を攻撃されたのが気にくわないのか怒っていた。
「母様、助けて」
娘がアンネに頼んだのだ。
俺はぎょっとした。
俺はもう二度とアンネを攻撃するわけにはいかない。思わず俺は後ずさった。
するとどうだ! な、なんとアンネが物凄くかわいい火の玉を出したのだ。
今にも消えそうな火の玉が、ポヨンポヨンと私目掛けて飛んで来るのだ。
俺は呆けたようにその火の玉を見つめていた。
きれいな火の玉だ。それが消えそうに成りながらゆっくりと飛んでくる。天国のアンネの魂のようだった。俺はその火の玉に見とれていた。
それはゆっくりと私目指して来る。さすがになにもしないわけには行かないので、その前に障壁を張った。
ズカーーーーン
次の瞬間凄まじい爆発が起こった。
さすがにアンネだ。油断させて攻撃する手か?
そして驚いた私の目の前にアンネ自身が飛んで来たのだ。
俺は咄嗟に目の前に強力な障壁を張ったのだ。
しかし、アンネは足を突き出して、俺の顔面に出る。
バキッ。
アンネはなんと今まで誰にも破られたことのない俺の強力な俺の障壁を蹴破ったのだ。
驚愕した俺の目の前にアンネの足が迫った。
次の瞬間、その驚いた俺の顔にアンネのキックが炸裂していた。
ズカーーーーーン
凄まじい衝撃音とともに俺は顔を蹴飛ばされて、体ごと吹っ飛ばされたのだった。
俺は衝撃で地面に叩きつけられて、何回転も転がった。
やられた! 俺は初めて己の障壁を破られたショックと地面に叩きつけられた衝撃でしばらく立ち上がれなかった。
我が師ですら俺の障壁は破れなかったのだ。それを破ったアンネの娘の魔術に興味を覚えたのだ。
さすがアンネの娘だ。
「アン、大丈夫か」
アン目掛けて次々に転移してくる魔術師たちを遠くに見かけて、俺は撤退を決意した。
再び、アンネの娘との対峙するときを期待しつつ、俺は慌てて、帰途についたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます