第77話 ブルーノに攻撃されました
画面の中では圧倒的にユリア様が強かった。更に魔術師団長とガーブリエル様が出てこられた段階で、勝負は完全についていた。
でも、スカンディーナはどういうつもりなのだろう?
この前の母の誘拐を謝っておきながら、またすぐに誘拐するなど、常識で考えても許されるものではないだろう。
私にはよく判らなかった。
事件が落着して、私は食堂から寮の部屋にエルダらと一緒に帰ろうとした。
既に外は真っ暗になっていた。空はどんよりと曇っていて真っ暗だった。
「なんか、幽霊の出そうな天気ね」
エルダの声が少し震えていた。
「今時、幽霊なんているわけないわよ。エルダって怖がりなの?」
エルダの少し怯えた声に私がからかった。
でも、そこにピカッと光ったのだ。
「キャッ」
エルダが私に抱きついてきた。
近くに稲妻が雷が落ちた。
ドンガラガッシャーン
凄まじい音がする。
そして、雨がポツポツと降ってきた。
それはあっという間にざあーーーーと大雨になったのだ。
「降ってきたわね」
私がエルダを見て言う。
エルダは私にしがみついたままだ。エルダは怖いのは苦手らしい。
まあ、私も幽霊とかは嫌いというかどちらかというと苦手だが、エルダほどではないと思う。
でも、その私達の前に、ぬっと、ずぶ濡れの人影が2人現れたのだ。女生徒と思しき人影と黒ずくめの男が現れたのだ。
「ギャッ、ゆ、幽霊よ」
エルダが叫んで思わず腰を抜かしていた。
私は女生徒をみた。
「カリーネ様」
そう、その女生徒は私の領地のカリーネ様だった。
でも、目がなんか虚ろだ。
「ブルーノ様。彼女がアンです」
虚ろな瞳のカリーネ様が隣の黒ずくめに言ったのだ。
今、ぶ、ブルーノって言った?
私の頭は一瞬でシャキッとした。
スカンディーナ王国の摂政で、私の両親の仇だ。
それが何故ここにいる?
それもカリーナ様を連れて。
私は訳が判らなくなった。
でも、一つだけわかっていることがあった。
彼がここにいる目的は私だということが。
ひょっとして大使館であったのは、陽動で、こちらが本命か。
私では絶対にスカンディーナの大魔術師には勝てないということは判っていた。
「その方がアンネローゼか」
ブルーノは私を一瞥した。
「アンネとは似ていないのだな」
それがどうしたと言いたかった。いや、皆にはよく間違われるんですけど、と思わず言いそうになった。そんな事はどうでもいいのに。
「水よ出でよ!」
私が呆然としている間に、我に返ったエルダが水魔術を放出していたのだ。
「アン、逃げて」
エルダの悲鳴が響く
その言葉に私は思わず後ろに向けて駆け出していた。
「ぎゃっ」
弾き飛ばされるエルダが見えた。
でも、命に別状はないみたいだ。
私は走りに走った。しかし、すぐにブルーノは追いついてきた。
絶対絶命のその私の前にルンド先生が現れたのだ。
「アン、どうしたのです」
「ブルーノです。ブルーノが現れたのです」
「ぶ、ブルーノが」
ルンド先生はきっとして私の後ろを見ると私を庇って立った。
「アンさん。ここは私に任せて逃げなさい」
「先生こそ逃げてください」
私は驚いて言った。先生は戦闘要員でも何でも無い。私を守って立つ必要なんて無いはず。
「何を言っているのです。アンネローゼ様。ここは私にお任せください」
ルンド先生はそう言いきった。
えっ、ルンド先生はスカンディーナ出身だったっけ? そんな経歴を聞いたような気がした。
「ウインドカッター」
先生は風魔術を巻き起こしてブルーノに直撃させていた。
しかし、ブルーノは障壁で防ぐ。
そして、今度は手をルンド先生に一閃した。
衝撃波が先生を襲いかかる。先生は衝撃波で、吹き飛んでいた。
「もう許さない」
私はそれを見て切れていた。もう敵わなくてもやるしかない。逃げても逃げ切れるものではなかった。
そして、全ての魔力を手に集めた。私の一番早く発動する魔術を使うことにしたのだ。
「ウィンドウストーム」
私の手から凄まじい突風がブルーノに襲いかかったのだ。
王宮でこれをやって既の所で魔術の塔を倒すところだった。この魔術、普通の人間なら1000人くらい弾き飛ばせるものだった。
でも、ブルーノは普通の人間ではなかったのだ。
突風はブルーノの手前で反射したのだ。
そして、突風が私に叩きつけられたのだ。
私は悲鳴を上げる間もなく、瞬時に吹き飛ばされたのだ。
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