第54話 加害者扱いされて逮捕されましたが、大魔術師と王太子が来て助けてくれました
凄まじい爆発音と爆炎でもうもうと火が出ていた。周りの建物は大半が燃え尽きていた。
そして、私以外で立っているものはいなかった。
ちょっとやりすぎたかもしれない。
でも、私じゃ手加減できなかったし、仕方がないと思う以外無かった。
その後、すぐに騎士たちがやってきた。
「お前がこの爆発を起こしたのか?」
騎士の詰問口調に思わず、
「えっ、そうですけど」
私は頷いていた。
「なんて酷いことをするんだ」
次の騎士の言葉に私はムッとした。私が被害者なのに、何故怒られるの? あなた達が本来ちゃんと警戒していないからこんな目に合わされたのに。
「でも、私は男達に襲われた被害者なんですけど」
「何を言う。貴様がわざと攻撃したのではないのか」
ええええ! 何を根拠にそんな事言われなきゃならいなのよ。
「取り敢えず、駐屯地まで来てもらおう」
「えっ、いや、何するのよ」
私が思わず、反抗すると、
ガチャリと音がした。な、なんと両手に手錠をかけられたのだ。
「えっ!」
私は固まってしまった。
「取り敢えず身柄を拘束する」
「な、何で」
「これは魔術防止用の手錠だ。暴れようとしても無駄だぞ」
「・・・・」
私は唖然としてしまった。
そ、そんな。無垢で純情な被害者にのに、どうして?
横暴な悪徳騎士に無理やり手錠をかけられたみたいだ。
な、何で被害者なのに、捕まらなければいけないの?
私には訳が分かんなかった。
そのまま近くの騎士の詰め所に連行された。取調室に連れて行かれる。
「お前の身元保証人は誰だ」
「母はアベニウスにいるわ」
私がぶすっとしていった。
「そこからここまでどうしてきたのだ」
「学園に通っているのよ」
「王立学園にか。どこかの貴族の娘か」
騎士が慌てて聞く。
「平民よ。騎士団長の息子も通っているけれど」
「それがどうかしたのか」
「我が騎士団は貴族だろうが、平民だろうが、罪を犯した者は公平に捌く」
男が言い切った。
「私は罪は犯していないわよ。正当防衛よ」
「何だその正当防衛と言うのは。変な言葉を作るな」
「何故爆裂魔術を使って破壊したのだ。あんなチンピラなぞ、貴様ほどの魔術師ならばすぐ片付けられただろうが」
「ガーブリエル様が私は制御がまだまだだから襲われたら使えっておっしゃったのよ」
「はあああ? 誰だガーブリエルという輩は新たなテロリストか?」
えっ、こいつガーブリエル様を知らないの?
「ダース、ガーブリエル様というのはこの国の大魔術師様だ」
「ベイダーさん、そ、そうなんですか」
ダースと言われた方は驚いて言った。えっ、なにこれ、この二人足したらダース・ベイダーなんだ。どうでもいいことが頭に浮かんだ。
「しかし、大魔術師様は弟子をもう取っておられない。貴様のような小娘にガーブリエル様が教えられるわけはないだろう」
「私はガーブリエル様の20年ぶりの弟子なの。魔術師団長に確認してよ」
「貴様のことなどで魔術師団長様を惑わす必要もないわ」
ベイダーが答えた。
「じゃあ、エルダかイングリッドに言ってよ」
「誰だ、それは?」
「エルダはオールソン公爵家のご令嬢。イングリッドはバーマン侯爵家のご令嬢よ」
「貴様のような平民がそんな高貴な方々と知り合いなわけなかろう」
「それに、我らは貴族だろうが、平民だろうが、差別はせん」
「私は被害者なのよ。何で加害者として扱われないといけないのよ」
私は叫ぶが全く相手にされなかったのだ。
「じゃあ、バルブロ・フォシュマン副師団長を呼んで頂けませんか。私の護衛役は今日は副師団長だったので」
「何故貴様に護衛がつくのだ」
「嘘をつくな!」
ダースとベイダーは口々に否定した。
「じゃあ私はどうなるのよ。明日も王宮に呼ばれているのに」
「何故貴様が呼ばれるのじゃ」
「嘘をつくな」
「嘘かどうか、その時に知りなさいよ。この前はガーブリエル様に妃殿下も怒られていらっしゃったから」
「はあああ」
「こいつの法螺も年季が入っておるな」
「次は王太子殿下が出てくるのではないか」
「殿下も知っているわよ。席が隣だから。もう、こんなんだったら、無理しても殿下に送ってもらったら良かったわ」
私は後悔した。
「お前それ以上言うと不敬罪でしょっぴくぞ」
「事実を言って何で不敬罪が適用されるのよ」
「図太い女ですな。最近は若い女も生意気になっている」
な、何で被害者がこんなに言われなきゃならないんだろう。
私は延々3時間位、グチグチ言われてもう疲れ切ってしまった。
「いい加減に吐いたらどうだ。騒乱を起こすために、やったのだろう。貴様はどこの国のスパイなのだ?」
「何回違うって言ったら気が済むのよ」
「そうか、では可愛そうだが拷問にかけないといけないのかな」
「そ、そんな」
私は蒼白になった。何故被害者が拷問にかけられないといけないの。嘘でしょ!
私はもう泣き出したくなった。
私は思わず後退りしようとして椅子ごと後ろに転けてしまった。
男達がニヤリと笑って立ち上がった。
私は思わず、後ろに後ずさった。
しかし、後ろはすぐに壁にぶち当たった。
騎士たちのニヤけた顔が迫る。
絶体絶命のピンチだった。
もうこうなったら最後の手段だ。私は騎士相手にフラッシュを使おうとした。
そこにダンッという音とともに、ガーブリエル様が転移してきたのだ。ガーブリエル様はものの見事におとこたちを下敷きにしていた。
「ガーブリエル様」
私はガーブリエル様が来てくれてホッとした。
しかし、
「アン、何を遊んでおるのだ」
「遊んでなんていません」
ガーブリエル様の声に私はムッとした。
「き、き様何奴だ」
下敷きになった騎士たちが誰何した。
「貴様らこそ何奴だ。何故アンが手錠をかけられておる?」
「ガーブリエル様が言われるように火の玉使ったら、敵国のスパイと間違われたんですけど」
私はムッとしたままだった。私の出した名前に騎士たちは唖然としていた。
「何故、すぐにわしの名前を出さなんだ」
「出したけど、信じてくれなかったんたです」
私はムッとしたままだった。
「なんじゃと」
ガーブリエル様が下の二人を睨みつけた。騎士二人は蒼白になっていた。
そこへだんっと言うおとともに、扉を蹴破ってフィル様が入って来た。
「アンっ、大丈夫か」
「ふぃ、フィル様」
私は駆け寄ってきたフィル様の胸の中に抱きしめられていた。いきなりで驚いたけど、抱きしめられて私は嬉しかった。と同時に急激にほっとしたからだろうか。意識を飛ばしていたのだ。
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