82 憑依スライム・アリス&カナタ22
戦いは終わった。
残ったのは大量のオークの死体。
「これ、どうしよう」
かなりのショッキング映像なんだけど、それを作ったのは僕でもあるわけで……うん、やっぱりショッキングだ。
耐性ができたのか気分悪くはなってないけど。
「いつもどおりに吸収する?」
「討伐の証明はキングの杖でもあればよかろう」
「ああ、そっか」
倒したって証拠がないと村の人たちが安心できないか。
考えてなかった。
「正式な依頼を受けていないし、そもそも我らは冒険者でもないが、討伐の証明で耳か鼻をもっていけば金になる。金を受け取る先が冒険者ギルドか役所になるかの違いだな。役所に直で行く方が安くなる。が、冒険者になればそれなりに制約があったりもするからな。普通の村人が駆除目当てでゴブリンを倒したときに換金するなどしたときの方法だな」
「おお、冒険者」
冒険者ってワードが出て来てちょっと嬉しい。
お金に換えるってところはいまはどうでもいいけど、冒険者っていうワードには心が躍るよね。
「それと、オーク肉も売れるぞ」
「え?」
「食肉としてオーク肉は高級品の部類だな。特にキングやジェネラルの肉ともなれば同じ重さの金や銀と並ぶとも言われている」
「うわぁ……」
「ちなみに、睾丸は精力薬の原料として大人気だ。キングのなら勃起不全も治ると言われている」
「アリス……」
女の子がそんなことをサラッというのはどうかと思うよ。
「普通のオークのそれでも、服用すれば奥手のカナタも止まらなくなること請け合いだな。飲むか?」
「飲まないよ!」
「残念だが、どうする?」
「どうするって?」
「オーク肉だ」
「む」
「カナタの世界には魔物食の文化はないしな。食わぬというならそれでもいいが」
「……美味しいの?」
「うん? それはもちろん。あちらの食を知った我でも、美味しいと断言できる」
「むむむ……」
「……ちなみに解体なら我ができる。我の空間魔法に収納しておけば自動で解体が可能だ」
「じゃあ、ゲットで」
「うむ!」
あれ、嬉しそう。
「甘味以外の食べ物で喜ぶって珍しい」
「え? うむ、そ、そんなことはないと思うが?」
「そんなに美味しいの?」
「それは美味いぞ。おっと、のんびりしていると鮮度が落ちるからな。ほれほれ、回収回収~」
あやしい。
と、そこで気付いた。
オークの睾丸。
アリスが全部手に入れた。
「やばい」
いつか、仕込まれるかもしれない。
アリスからの出されたものはしばらく気を付けよう。
その後、村に戻って全部が終わったことを告げ、その証拠にオークキングの冠と杖を見せて納得してもらった。
子供たちにも喜ばれてほっこりしつつ、村を離れる。
そこで元の世界に戻った。
朝。
アリスは本当に空間魔法で解体ができるらしい。
起きるなりご飯を炊く。
それからオーク肉を出してもらう。
出てきたのは脂身の多い塊肉。豚バラブロックみたい。
とりあえず頑張って薄切りと角切りを作る。
どちらもフライパンで焼くだけ。
調味料はマキシマム。
じりじりとフライパンで焦げてく匂いが食欲を刺激する。
さあ、実食。
「美味~~~~い!!」
マキシマムは少なめにしたんだけど、肉の味がすごい。脂から溢れる旨味が凄い。
美味しい!
ご飯に合う。
こんなに美味しい肉がたくさんある!
「そうか!」
気付いてしまった。
向こうでお金を手に入れても仕方ないと思っていたけど、この方法なら。
「美味しい食材をたくさん手に入れたら、食費が浮く!」
「待て待て待て!」
僕の気付きになぜかアリスが慌てる。
「甘いものならこっちの方がいいからな。断然にいいからな!」
「うーん、でもアリスは甘いものばかり食べすぎだと思うな」
「そんなことはないと言っているだろう!」
「じゃあ、野菜も食べようね」
「ぐっ、うう!」
僕がそっと差し出した野菜スープをアリスは苦々しく受け取った。
生野菜じゃないだけ僕って優しいと思うんだけどなぁ。
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