73 福の神?


 GWが終わった。

 なんだか激動の黄金週間だったので、休みボケになる暇もない。

 いや、ボケている場合じゃない。

 途中も色々と衝撃だったけど、最後のイベントもなかなかの驚きが連続した。


「おめでとうございます! 本日の幸運なお客様です! 完全フリーパス券プレゼント!」

「大当たり! 一等のスウィッチです!」

「大当たり! アイフォンプレゼント!」

「大当たり!」

「大当たり!」


 なんだかわからないけど大当たりした。

 W山ハイランドだけじゃなくて、ホテルの中のゲーセンでUFOキャッチャーとかの景品を当てるゲームをすると一発で当たってしまう。


 帰る途中で立ち寄った飲食店やコンビニでクジをしてもあたった。

 なぜか行く先々でクジとか福引とかをやっていて、やるたびになにかが当たった。


 おかげで、部屋に帰り付いた時にはテレビとスウィッチとスマホとゲーム各種とタブレットやトースター等々が当たっていた。


「なにか変だ」


 これが変じゃなかったらなにが変なのか。


「幸運なのだからよかろう」


 アリスは自分用となったスマホを興味深く弄っている。まだ契約していないからWi-Fiがないと何もできない。契約には保護者要るよね? 紅色さんにお願いしよう。

 そういえばモンハンも手に入った。掛井君と遊べるな。


「でも変だよ」


 これはなにかあると思ってもう一度ステータスを確認する。



【ステータス】

●カナタ・コトヨ 男

●生命力 60/60

●生命装甲 1500/1500

●個人魔力 1750/1750(+1500)

●スキル:魔眼lv08(霊視・魔力喰いlv03・遠視lv03・解析)/個人情報閲覧/総合制御lv15/運動能力強化lv05/仮想生命装甲lv15/魔力最大値増加lv15/生活魔法lv10/空間魔法lv10/基礎魔法lv10/魔法応用lv10/神聖魔法lv10/変身(スライム時限定)/万能翻訳/魔法陣学lv05/透明化/気配遮断lv01/恐怖耐性lv02/並列思考lv05

●蓄積魔力値:104800

●加護:福神の加護・序



「んん?」


 福神の加護・序?


「え? いつのまに?」

「ほう? 序か? その程度でこれだけの効果があるのなら、極めるとどうなるのだろうな」

「いや、そういう問題⁉」


 カラカラと笑うアリスがわからない。


「ありがたいものなのだからいいではないか?」

「嬉しいけど! そりゃ嬉しいけど。原因がわからないと落ち着かないんですけど!」

「それなら、正体を確かめればいい」

「え?」

「魔眼を育ててみろ。なにか見えるだろう」


 言われるとなにをすればいいかなんとなくわかる。


 魔眼を8から10にする。

 霊視を2と解析を2。


 で、とりあえず解析をステータス画面の福神の加護・序に向ける。

 なにか見えた。


《福神の加護・序:これまでに手に入った恩寵が形を得たもの。成長の可能性有》


「恩寵?」


 しばらく考えておっさん福助のことを思い出した。

 それから、GWで入れた温泉の件。


「え? もしかしてあのおっさんが僕たちの側に?」


 レベルの上がった霊視でそこら中を見る。

 あ、なにかいる。

 いつもの黒い影ではなくて、金色の光の粒みたいなものがいくつも集まったなにかがいる。

 部屋の中央にある段ボールの山の影に隠れるようにしている。


「う~ん?」


 これは霊視のレベルを上げたらもっとちゃんと見えると勘が告げている。

 貯蓄魔力値も残っているので、きりよく霊視を5にしてみる。


 それで改めてみると、いた。

 金色の光の粒があったところに女の子がいた。

 巫女服を着た幼稚園児ぐらいの女の子。


「あっ」


 見たことがある。

 あの扇谷の岩の上で正座していた女の子な気がする。


「え? ここにいていいの?」


 僕が聞くと、女の子はコクコクと頷いた。


「ええと、ありがとう。でも、温泉は大丈夫なの?」


 今度はフルフルと首を横に振る。


「お礼」


 小さな声でそう言った。

 それからすぐに言葉を継ぎ足した。


「あたし、お礼」

「うん、ありがとう」

「違う」

「え?」

「あたし、分かれた。あたし、あなたに、あっち、温泉に」


 分かれた?


「ええと……わからないけど、とりあえずあっちのことは大丈夫ってことでいいのかな?」

「うん」

「そっか」


 それならいいか。


「それじゃあ……あ、君の名前は?」

「……ミズハ」

「わかった。ミズハだね。よろしく。それでミズハが寝るところとかどうしようかな」


 一緒のベッドで寝る?

 すでにアリスとだけでも結構狭いんだけど。


 なんて考えているとフルフルと首を振られた。


「いらない」

「そうなの? 寝ないとか?」


 コクリと頷く。

 でも、寝ないからって女の子を放っておくわけにはいかないし……。


「神棚」

「え?」

「神棚があれば、そこにいる」

「そっか、神棚か」


 福の神だもんね。

 でも、神棚なんてどうやって用意すれば……あ、引っ越しのあれこれ用意してるときにどっかで売ってるの見た。

 そうだ、DIYショップだ。

 でも、今日はもう閉まってるか。


「なら、明日。学校終わってから買って帰って来ることになるけど、いいかな?」

「うん」

「よし、それじゃあとりあえず、この箱をなんとかしようか」


 幸運にも明日は燃えるごみの日だからね。段ボールは捨てれるね。

 うわぁ、一人暮らしの部屋には不釣り合いなぐらいに大きいテレビだな。

 スウィッチをモニターでやるにしても豪華だ。

 それからタブレットとかスウィッチの初期設定とかしている内にその日は終わってしまった。




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