34 ショッピング


 昼ご飯を終わらせてショッピングセンター内にある電気屋に移動する。


「結局、冷蔵庫は買うのか?」

「まぁ、あれば便利だからね」


 とはいっても一人暮らし用の安いのだけどね。

 三万円前後のがあったのでそれを購入。


 だけど、冷蔵庫はもうついでだった。


「アリスの服を買うよ」

「なに?」

「パジャマもね」

「いや、いらんぞ?」

「いるよ」

「いや、知っているだろう? 我の服は……」

「いるから」

「カナタ、怒っているのか?」

「そんなことないよ」

「いや、怒っておるな? わかった悪かった。もうしないから、な?」

「買うよ」

「ごめん!」

「買うから」


 女の子って服買うって言ったら喜ぶものだと思ってたけど。

 パジャマどころか下着もないのは考え物だしね。

 問答無用でそれっぽい店を見つけるとそこのお姉さんにお任せした。

 普段は制服だしほっとくとゴスロリになるから要らないかもだけど、下着多めで服は三セット購入。

 選ぶのを任せた店員のお姉さんはアリスを見てウッキウキで選んでくれた。


 いつものゴスロリではない普通の十代っぽい格好は新鮮でドキドキした。

 服を買い終えると夕食の材料を朝食のパンを買って帰った。


「ああ、疲れた!」


 手ぶらのアリスが思いっきり声を放って部屋に入っていく。

 同じく手ぶらの僕はそんな彼女の背を苦笑で見ながら後に続き、空間魔法を使った。

 人目を避けてからそこに買った物を入れてみたのだ。


「うん、大丈夫そう」


 服はともかく、食品の状態を確かめてほっと息を吐く。


「重さも感じないし、ほんとに便利だね」

「冷蔵庫なんぞ要らなかったのではないか?」


 それはそれ、これはこれだ。


「とりあえずは一通りそろえたいよね」

「そういうものか?」

「そういうもの」


 誰かを招待する気は特にないけど、当たり前の物がなくて変に勘繰られたりするのも嫌だし。


「そういえば、アリスもスマホ要るよね」

「スマホ? ああ、あの小さい機械か」

「そうそう」

「離れた時の連絡なら、念話というスキルがあるぞ」

「それはそれでまた今度手に入れるけど、アリスもこっちの文明をもうちょっと知ろうね」


 せっかくお金があるんだから、いまのうちに揃えられるものは揃えてしまおう。


「むむ」

「後、普通のご飯も食べようね」

「むう!」


 というわけで焼きそばを作る。

 使い切りの袋野菜をどさっと入れた野菜たっぷり焼きそばです。


「美味しくない?」

「む、美味しい」

「ほんとに?」

「ほ、ほんとうだぞ!」

「それならもうちょっと美味しそうに食べようよ」

「むう。だが、甘味が我を呼んでいるのだ!」

「甘味もいつもだと有難みがなくなるよね」

「そんなことはないぞ!」

「で、美味しくないの?」

「……美味しいです」


 勝った。

 とはいえ服の時から押せ押せしすぎたので内緒で買っておいたプリンを食後に出しておいた。





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