第29話 真実(レオンフィード視点)

 マキリート伯爵と令嬢は国王を魅了の魔法で傀儡し、王妃や大公、カインロッド殿下を亡き者にし、令嬢が産んだ子供を次期国王にしてこの国を乗っ取ろうとしていた罪で処刑された。

 国王は愛妾達に子供ができないように、避妊魔法をかけられていたので子供ができる訳がなく、マキリート令嬢が懐妊したと言うのも本当かどうかわからない。もし本当だとしても誰の子供かわからない。

 マキリート伯爵家は取り潰された。


 国王は何度も繰り返し魅力の魔法をかけられたせいで魔法を解くと重い後遺症が残り意識が戻らない。と言うことにしておいた。

 本当に最初は魅了の魔法にはかかって深い関係になっていたのだが、元々好色だったので、若いマキリート令嬢の身体に夢中になり、なんでも言うことを聞いていただけだったようだ。本当に我が兄ながら情けない。脳と下半身が直結しているんだろうとは思っていたが子供ほど歳の離れた友人の娘に手を出すとは情けない。しかも父親と同じ精力増強剤を常に服用していたとは。そこまでしてやりたいのか? 父親も兄も気持ち悪くて身震いがする。


 私は兄と話をしてみた。

「兄上は何故政務を疎かにして愛妾にうつつを抜かしていたのですか」

「政務など誰でもできる。私は私が国王として存在していることが重要なのだ。私と交わると幸せになれる。私は皆を幸せにしてやっている。女を幸せにする能力のないお前は政務をしていればよい」


 死んでもらうしかない。


 兄の話の途中からどうやって死んでもらおう、毒か?それとも斬り捨てるか?いっそ生き埋めにしてやるか?


「次の国王はキャサリンの腹の中にいる子供にするからな」

 キャサリンとはマキリート令嬢のことか。

「兄上、ご存知なかったかもしれませんが、あなたには避妊魔法がかけられていたのですよ。愛妾方に子供ができると王位継承問題がややこしいのでね。なのでマキリート嬢の腹の子供の父親はあなたではありませんよ」

「馬鹿なことを言うな!」

 兄は激高している。魔法をかけられたことに対してなのか?それとも他の男の子供を自分の子と偽られたことか?


「影の話によるとマキリート嬢の相手は護衛騎士だったそうです。国王の性技はつまらないとマキリート嬢が誘惑したそうですよ。もちろん魅了の魔法をかけて」

「……」

 私は部屋を出た。


 それから少しして国王は魅了の魔法の後遺症が重く、意識を回復しないままこの世を去ったとそして次の国王にはカインロッド第2王子が就任すると国民に発表した。


「母上、私は国王など無理です。第1王子である兄上がなるのが筋、兄上にこの国に戻ってきてもらい、国王になっていただきましょう」


 発表を聞いたカインロッドが慌てて私とミランダがいる執務室に飛び込んできた。


「その話は私の部屋でいたしましょうか。みんなはしばらく休憩していて。大公閣下まいりましょう」


 ミランダに言われカインロッドと私はミランダの部屋に向かった。

 廊下でもカインロッドはずっと「私には無理です」と連呼している。国王には兄のランドルフがなるものとずっと思っていたようだ。


 部屋に入るとミランダは人払いをし、ドアを閉めた。この部屋には防音魔法と盗聴無効魔法がかかっている。


「カインロッド、ランドルフは王家と血の繋がりがないのです」

 いきなりミランダはカインロッドにぶちかました。


「どういうことですか?」

「あなたも国王がどんな方か存じているわよね? 私の親友のシンシアが国王に無理矢理、王妃にされた時にはお腹の中には結婚を約束した恋人の子供がいたの。国王はそれを自分の子供だと勝手に思い込んだのよ。シンシアとは子供ができるような関係は一切ないわ。それなのに王宮に半ば監禁状態にされ恋人と引き裂かれたのよ」

「では、兄上はその恋人の子供だと」


 カインロッドは驚きで固まっている。


「そうよ。国王に暴力を振るわれ大怪我をして、心も壊れかけていたの。そんな時、国王が私を側妃にと王命が来たのよ。だから私は当時の国王と今の国王に復讐することにしたの。大公や友達のソフィアやジェフ、ライザやアーサー、そしてシンシアの恋人のふれで様を巻き込んだのよ」

「復讐?」

「そうだ。このままあいつらが国のトップにいては我が国は終わる。私はこの国をまともに戻す計画を立てた」

「計画ですか?」


 私とミランダは計画の全てをカインロッドに話した。


「まさか、兄上の実の父親が前レキソール侯爵だったとは。それに侯爵もシンシア様も生きていたなんて、すっかり騙されてしまいました。兄上は常々、レキソール侯爵が父親ならどんなにいいか仰っていました。おふたりが生きていたことは青天の霹靂ですが、本当に良かったです」


 カインロッドはほっとしているようだ。


「では、私が国王になるのは兄上もご存知なのですね。そして、この国戻り私を支えてくれるのですね」

「ああ、ランドルフはラックノーラン国でフレデリックから侯爵としての、そして側近としての教育を受けている。今は親子3人で幸せに暮らしている」

「幸せに暮らしているのにこの国に戻ってきてくれるのでしょうか」

「シンシアはつい最近、ランドルフの弟を産んだそうだ。その子がルリッド伯爵家の嫡男になる。それはランドルフも納得している。ランドルフは血筋どおり、レキソール侯爵家を継いでもらう」

「では、アンジェラと」

「そういう事だ。ランドルフがアンジェラと結婚し、レキソール侯爵家を継げば私達の長年の計画は終わる」


 あとはアンジェラとランドルフが上手く結婚してくれればな。


「そうだ。言い忘れていた。お前の実の父親は国王ではなく、私だからな」

「???」


 カインロッドは私の告白に驚き呼吸を忘れているようだった。

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