第28話 前世(レオンフィード視点)
私は影を使ってマキリート伯爵の令嬢が魅了の魔法を国王である兄上にかけている証拠を揃えた。
この計画の仲間でカインロッドの婚約者のリンジーの父親のアーサーは王宮魔導士団の団長で嫡男のレナードは魔道具を作るのを得意としている。
私が希望する道具を説明するとうまい具合にそれらしいものを作ってくれている。
私は前世で言うところのビデオのようなものをレナードに作ってもらった。
隠しカメラで録画して、それを再生する。それには令嬢が魅了の魔法をかける様子や伯爵が令嬢と計画を話す様子が映っていた。
私の前世は日本人だった。恋人とドライブデートをしていた時、事故に巻き込まれ亡くなった。この国は日本とは違い魔法が使える。私は日本人だった頃はゼネコンで設計の仕事をしていた、何故前世の記憶があったのかは分からないが、その頃の知識を活かし河川の工事をしたり、橋や道路を作り国を豊かにしてきた。
この世界が小説「真実の愛」の世界だと気がついたのはカインロッドの婚約式の時だった。
ちょうど亡くなる前、恋人の梨沙がその小説の話をしていた。私が覚えていた名前はランドルフ、リンジー、アンジェラ。
第2王子と恋人同士だったリンジーがランドルフ王太子の側妃になる話だ。
カインロッドは第2王子、まさか梨沙はリンジーに転生しているのか?
リンジーと何度も話はしているが、梨沙の面影はない。
それに「真実の愛」とこの世界は全く違う似て非なる世界だ。
ランドルフは理不尽で馬鹿王太子ではなく、思慮深く、賢く、至極まともな男だ。
父親に溺愛されて我儘放題どころか、父親からは存在すら無視されている。側妃の息子の第2王子のカインロッドを次期国王にし、自分は王位継承権を放棄して臣下に降り国王を支えたいと言っていた。
小説の中ではモブキャラであった、ランドルフ王太子の叔父の私が仲間達と結託し、無意識に小説の筋書きを変えてしまったようだ。
梨沙はアンジェラに転生しているのだろうか? まだアンジェラとは会った事はない。アンジェラはアイデアが豊富らしく、それを形にして、アンジェラの父親で私の仲間でもあるジェフの商会はかなり潤っているらしい。
若い女性が好みそうな商品も多い。多分梨沙なんだろう。アンジェラは母親のソフィア譲りの丸い可愛い顔で食べることが好きなのんびりした令嬢らしい。確か梨沙もそんな感じだったな。
そのうち会う機会もあるだろう。私が薫だと知った時の梨沙の顔を想像しただけで笑い出してしまう。
まぁ、この世界ではもう恋人になることはないが、前世でも恋人と言っても私達は親友のような感じだったし、まだ清い関係だったので違和感はない。
せっかくアンジェラに転生したのだったら小説どおりランドルフと結ばれてほしいのだが。
私の企みはあと少しで全て終わる。そのときに会ってびっくりさせてやろうか。
いや、一生知らないままの方がいいのかもしれないな。私たちはもう違う人間を生きているのだから。
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