第14話 ラストミッション
レベル100のワイバーンは、この街を破壊し始めた。私は急いで、ワイバーンのいる所まで向かった。でも、私のレベルは30。ワイバーンに勝てるはずがない。それより、負けるのが怖かった。お父さんからもらった魔法の杖。何でも出来ると言っていたが、本当なのかな。
「炎の魔術!!」
声を出すと魔法の杖の先から炎が出たが、全然強くない。ワイバーンに効かなかった。
「じゃあ……炎の秘術!!」
でも、秘術を発動する条件を満たしていなかった。じゃあどうすれば……。そうだ。ティランが使っていた時間停止の魔法が使えれば……。
「タイムストップ!!」
その瞬間、ワイバーンの動きが止まった。でも、止めた所でどうすれば良いんだよ……。
再びワイバーンの時が動き出し、私に向かって炎を吐いた。ギリギリかわすことが出来たが、私の足は恐怖で震えていた。
今まで、私の冒険にはパートナーがいてくれた。
森の中では海斗。洞窟の中ではティラン。
私には誰かがいないと勝てないんだ。
私は1人じゃ何もできない。
ワイバーンは私を手で掴み、地面へと投げ落とした。
やっぱり1人じゃ何もできない……。
その瞬間、私の時が止まった。え……。もしかして。
「ガォーー」
オオカミの鳴き声が聞こえてきた。
「ビラ、助けに来たよ」
その声は……ティラン。ティランは大きなオオカミに乗って現れた。私の時が動き始め、オオカミの背中に乗ることが出来た。
「そのオオカミって……」
「洞窟で仲間にしたんだ」
「やっぱり凄いよ。理沙は……」
「全て思い出したんだね。真澄」
私達は抱き合った。
「うん。ありがとう」
「それより、今はワイバーンだよ」
ティランと私はオオカミの背中に乗り、ワイバーンの背後に回った。
「今だ。オオカミ、腕に噛みつけ」
ワイバーンの腕に噛み付いた。ワイバーンは悲鳴を上げ始めた。
「助けて……暑いよ」
突然、誰かの声が聞こえた。ワイバーンの炎がその少女に当たり、服が少し燃えていた。
「ティランはワイバーンと戦ってて。私は少女を助けに行く」
「うん」
少女の服は燃えている。
「水の魔術!!」
水で少女の服の炎は消えた。
「お姉さん、ありがとう」
「どういたしまして」
「うわーーー」
少女は悲鳴を上げた。ワイバーンは少女を掴み、投げ飛ばそうとしていた。
もう無理だ……。もう……。
「代々伝わる最強の技 炎の秘術
魔法の杖を前に出し、力を込める。
そして、倒したい相手を強く念じる。
この技は誰かを助けるために使う事。それ以外では使ってはならない。それ以外で使った場合、この技は発動しない。この技の反動ダメージは魔術の2倍。使う時は死を覚悟しろ」
そうだ……。今こそチャンスだ。あの少女を助けたい。あの少女を……。魔法の杖に力が漲ってきた。前の杖のよりも遥かに熱く感じる。反動ダメージは怖い。でも、あの少女が死ぬよりマシだ。
「炎の秘術!!」
叫んだ瞬間、大きな炎がワイバーンを包み込み、激しく燃えた。ワイバーンが手を離して、少女は地面に落ちて行った。それをティランのオオカミが見事にキャッチした。無事、ワイバーンは倒れて行った。そして、自分もその場に倒れ込んだ。
「お姉さん、ありがとう……」
「君、名前は?」
「私はクリス」
そう言って少女はオオカミから飛び降りてヴィラン町へ走って行った。
「ミッションクリア」
スマホから微かに聞こえてきた。ミッションクリアしたんだ……。もう体が動かない。
ドン ドン ドン
何か音が聞こえる。目を開けると、私の目の前に倒したはずのワイバーンが立っていた。ワイバーンは正気を失い、暴れていた。
「ビラ、早く逃げるよ……」
「うん……」
ティランが私をオオカミの背中に乗せてくれた。そして、ヴィラン町まで逃げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます