第13話 私の過去
「ヴィラン」 「理沙」 「ティラン」
この3つの単語が頭の中に浮かんでいる。
私はヴィラン……。その瞬間、点と点が全てつながり、全てを思い出した。
私は元々、この異世界で誕生した。
お母さんもお父さんも人間だった。
当時、この世界ではモンスターが人間を襲う事件が多発していた。
そんなある日、人喰いモンスターが誕生した。
そのモンスターは次々に人間を食べてしまい、人間の人口は10人にまで減った。
お父さんは【剣士】。
このモンスターを倒す事でミッションクリアとなる。
ミッションをクリアすれば、賞金が得られる。
その為に戦っていた。
でも、お父さんは負け、モンスターに食べられてしまった。
お父さんが人喰いモンスターを遠くに連れて行ったため、モンスターが私達の元に戻ってくることは無かった。
「ヴィラン、お父さんが食べられたって……」
私に向かって寂しそうな声で話しかけてくる。
「うん……」
当時、来世に転生できるという考え自体そもそも無かった。
だから、もう会えない。
そう思い込んでいた。
「私、モンスターと仲良くなりたい。そして、モンスターと共存する社会を作りたい」
「頑張って!!」
それからお母さんはモンスター図鑑で勉強を始めた。
仲良くなる為にはまず相手のことを知らないといけない。そう思ったのだろう。
そして1年が過ぎた。
お母さんは沢山のモンスター図鑑を読み、モンスターに詳しくなっていた。
「私、異種族結婚をするわ」
異種族結婚は異例だった。異種族結婚して、子供が産まれてくるかどうかも分からない。産んだ子供にどんな影響が出るかもわからない。私は少し怖かった。
お母さんは山奥に住む魔法使いの家に向かった。
私はその間、ずっと家で1人で暮らしていた。
その時、既に10歳。
それから1年が経ったある日、お母さんが家に帰ってきた。
「ヴィラン、新しい子供が出来たよ」
「新しい子供?」
「うん。男の魔法使いの人と結婚して、子供を産んだの。名前はティラン。あなたの妹よ」
「ティラン、よろしくね」
ティランは笑って私に向かって手を振った。
そんなある日、また人喰いモンスターが現れたということで町はパニックになった。
「私が倒すから。あなた達はここにいて」
そう言ってお母さんは外に出て行った。
それからお母さんは帰ってこなかった。
お母さんが帰ってきた時には体はボロボロ、声も細くあまり出ていなかった。
「ヴィラン……、あなたに私の夢を託すよ……」
そう言って私の目の前でお母さんは倒れた。
お母さんの夢。それはモンスターと共存する事。
そのお母さんの夢を継いで私は、モンスターと仲良くなる方法を探した。
でも、見つからなかった。
それから更に1年が経った頃、私達の家に突然ワイバーンが襲いかかってきた。
この時、初めてワイバーンのレベルが見えるようになった。
レベルは50。
もう死ぬのかな……。
そう思っていた時、ティランが近くにあった木の枝を持って何かを唱え始めた。
「ヴィラ ティラ テラ ティラ ティトラ……」
その瞬間、ワイバーンはティランの目の前で寝転んだ。
そのワイバーンのお腹をティランが撫で始めた。
ティランは魔法使いの子供。
だからモンスターと仲良くなる魔法が使えるのかも知れない。
これならきっとお母さんの夢を……実現できるかも知れない。
それからモンスターを次々に従えていき、モンスターを手下に使った。
でも、モンスターと共存する社会はそう簡単には作れなかった。
私は、ワイバーンを連れて町に向かった。この時ワイバーンのレベルはまだ50。ワイバーンと少しでも仲良くなってほしい。そう思っていた。
でも、現実はそう甘くは無かった。
町のみんなはワイバーンを怖がり、ワイバーンをを見るとすぐに逃げていく。
私は1人だけ取り残された気分だった。
家に帰り、私は泣いた。
私は良いことをしているはずなのに……。
何でみんな、怖がるの?
ワイバーンは何もしてないのに……。
私に込み上げてきたのは町に対する怒りだった。
「もう許さない……」
私がこの町を支配してやる……。町の真ん中にモンスターを使ってヴィラン城を作り、初代ヴィラン女王と名乗った。
モンスターのレベルを調整する為、記憶のカセットを作り、ワイバーンをレベル100にした。
ワイバーンは何故だか少し泣いていた。
「ワイバーン、どうしたの?」
ティランを使ってワイバーンの話を聞いた。どうやらワイバーンは全て思い出してしまったらしい。ワイバーンには愛する人間がいた。でも、浮気をされ……。
「ワイバーン、お前には復讐したい相手が居るはずだ。さあ、この世界にいる人間を倒せ。そして、モンスター中心の世界を作り上げるぞ」
そして、ワイバーンをこの世界には解き放った。町を壊滅寸前まで追い込んだ。
「これからこの町は私の植民地だ。名付けてヴィラン町だ」
私は人間を襲う事が楽しかった。
人間の苦しむ顔、泣き叫ぶ声、全て見てて楽しかった。
ワイバーンと世界を飛び回り、ある一件の家にたどり着いた時、突然ワイバーンが暴れ始めた。
「大丈夫か?」
この家に復讐したい相手がいるとワイバーンが言っているとティランから聞いた。私はその家の中に入った。そこには1人の少年がいた。その少年を私は可哀想だと思い、保護する事に決めた。
「こんにちは。私はヴィラン。あなたを助けに来たの」
「本当ですか?」
「私の城においで」
そう言って、私はその少年を城の中に連れて行った。
それがクロンとの出会いだった。
ドン ドン ドン
突然、ヴィラン城に響き渡る音。私は窓から覗いた。窓の外には巨大なワイバーンがいた。
ピロリン
「ラストミッション ワイバーンを倒せ!!」
今、最後の戦いが始まろうとしていた。
〔現在の記憶のカセットの枚数 30枚〕
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