第3章 お父さんとの再会

第10話 倒せない敵

ついに城の目の前に辿り着いた。


もう1人しかいない。


今までクロンやティランに助けてもらいながらここまで来たんだ。


私は運が良いのかもしれない。


私は覚悟を決めて、扉を開けた。


城の扉は簡単に開ける事が出来た。


中に入ると天井には巨大なシャンデリアがあり、赤いカーペットがずっと真っ直ぐに続いていた。


私が一歩を踏み出した瞬間、アラームが鳴り始めた。


「何の用ですか?」


城中に響き渡る声。女の人の声だった。


「あなたは誰ですか?」


「私は第3代ヴィランのクリスティーヌだ」


ヴィラン?


「ヴィランって何ですか?」


「この国の素晴らしい称号の事だよ。それよりあなたの名前は?」


「私はビラ」


「何をしに来たのですか?」


「地下に捕まっているお父さんを助けに来たの」


「そうですか……。それなら私とゲームをしませんか?勝てばあなたのお父さんを解放してあげますよ」


「ゲーム?」


「今からあなたの目の前に無限転生ロボを送り込みます。そのロボットは地下に繋がる鍵を持っています。その鍵を奪う事が出来ればあなたの勝ちです。お父さんを解放します。勿論参加しますよね?」


お父さんを助け出すため。


現実世界に帰るため。


「はい。参加します」


「まあどうせ勝てないと思いますけどね……。検討を祈ります」


目の前にゲートが現れた。


「ここが異世界か……」


その声と共に現れたのは身長の高い男の人だった。2度見して漸く気づいた。その男の人が海斗だと。


「海斗……。どうしてここに……」


海斗はあの時、私が倒したはずなのに。私の目から涙が溢れた。でも、会えただけで嬉しかった。


『もうタイムリミットなんだ……。なあ、お前のミッションは【剣士】を倒す事だろ?僕にとどめを刺せばきっとミッションは達成できるよ……』


【2回転生をした者に来世は無い】


もし、現実世界から異世界に行ってまた現実世界に戻ったとしても……。


帰ってこれないはず。


無限転生ってそういう事か……。


「お前をここで倒す!!」


海斗はそう言って大きな剣を持って私の所に近づいてきた。


「海斗、私を覚えてないの?」


「お前は誰だ?俺はお前を倒すためにここに来た」


海斗の剣をギリギリで避け、遠くに逃げようとした。


だって好きな人を倒せるはずが無いよ。


あの時、海斗の胸を剣で刺した時からずっと胸が痛かったんだよ。


海斗とずっと一緒にいたかった。そう何度も思った。


『僕は倒さないよ。だって僕の好きだった人に顔が似ているから……』


あの時の記憶がひとつひとつ蘇っていく。


私は今も海斗のことが好きなんだ。


それなのに海斗は全て忘れている。私の事も。


海斗の右のズボンのポケットに鍵らしき物が見えた。


どうやって海斗を倒さずに鍵を取るか……。


〔現在の記憶のカセットの枚数 30枚〕

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