第9話 城の場所
『ねえ、理沙。この紙に書いてあるR4ってどう言う意味なの?』
『これは令和。令和4年と言うことだよ』
『そうなんだ……。やっぱり理沙は頼りになるね』
私にとっての唯一の女友達が理沙だった。
理沙とは毎日、学校で話していた。
でも、何かが原因で私達は会わなくなった。
「ビラ、大丈夫?考え込んでいたけど……」
「う、うん。それよりこの下のRの意味は分かったよ。令和だよ」
「現実世界の元号か……」
「ティランはどうして令和が元号だと分かったの?」
「私も令和4年まで現実世界にいたから」
「そうなんだ……」
「それより上のrは何なの?」
「上のrは多分半径だと思うよ……」
「半径?」
「数学の半径をrって言うから」
「あー!!そう言うことか……」
「つまり答えはレイン。レイン⇨雨という事」
「雨を降らせるなら水の魔術だな」
私は魔法の杖に力を込めて
「水の魔術!!」
と叫んだ。上に放った水は天井で弾けて雨となった。雨が降ると目の前に階段が現れた。
「ガルルル」
もう目の前までオオカミが来ていた。
「ティラン、早く逃げるよ」
「うん」
階段を登った先は洞窟の出口だった。
お願い。間に合って……。
それでも近づいてくるオオカミ。
出口まであと100メートル。
そんな所でオオカミに先を回られてしまった。
「ビラ、ここは私が時を止めておくから。その間に出口に向かって。きっとレベルが高いから5秒も持たないかもしれない」
「ティランはどうするの?」
「私は大丈夫。何とかしてここを脱出するから」
「分かった……。絶対にまた会おうね」
「うん」
「タイムストップ!!」
ティランがオオカミの時を止めた。
私は後ろを振り返らず、ただ前を向いて走り出した。
洞窟を出た先はまた広大な草原だった。
「キャーー」
残酷な悲鳴が洞窟の外から聞こえてくる。
私の目には涙が零れた。
私の目の前には宝箱があった。
宝箱の中には記憶のカセットが5枚入っていた。
私はスマホに5枚差し込んだ。
そして、浮かび上がって来た写真はヴィラン城とその場所を示す地図だった。
ヴィラン城はもう目の前に見えていた。
「よし、行くぞ」
涙を拭いて私は、ヴィラン城の方に進み始めた。
一方、ヴィラン城。
「ヴィラン女王様、あいつがもう目の前まで来ています」
「そうか……。まだ記憶は戻ってないだろ?」
「はい。そうですけど、いづれ思い出すと思います」
「女王の座は決して譲らない。それよりあの計画はどうなってるんだ?」
「あの計画と言いますと?」
「無限転生ロボット」
「それなら今、現実世界にいます。もうすぐ異世界に戻ってくるように命令します」
「よろしく頼むよ」
「あと、ティラン様が洞窟に遭難したそうです」
「直ちに救助を出せ。あいつだけは死なせてはいけない。あいつは最強の【魔法使い】なんだから」
〔現在の記憶のカセットの枚数 30枚〕
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