第3話 君を守りたい

「僕は倒さないよ。だって僕の好きだった人に顔が似ているから……」


その言葉を聞いた瞬間、私の顔は一気に赤くなった。


「え、本当?」


「うん……。だから、僕はビラを死んでも守り抜くよ」


「ありがとう」


でも、私も早く強くならないと……。クロンに迷惑ばかりかけている。




森の中を歩き進めると小さな宝箱を発見した。


「クロン、宝箱があったよ」


「モンスターが中に入っている可能性もあるから、注意しろよ」


「うん」


恐る恐る宝箱を開けると、そこには記憶のカセットが2枚と回復の薬のカセットが3個入っていた。


「この宝箱は大当たりだな」


私はポケットからスマホを取り出し、記憶のカセットを2枚差し込んだ。


口元が見えてきたが、まだ誰の写真かは分からない。回復の薬のカセットもスマホに入れた。


「何で回復の薬もカセットなの?」


「持つのが大変だろう。使う時に、スマホの画面の取り出すを使えば、カセットが立体化して、画面から出てくるから」


このスマホって凄いなあ……。誰が作ったんだろう。


ガサッ


「ビラ、後ろ気をつけろ!!」


クロンの声で後ろを振り返ると、そこには1人の剣を持った男が立っていた。


「やっと見つけたよ。【魔法使い】を……」


その男のレベルは60。クロンでも到底歯が立たないくらいのレベルだ。


その男は剣を私の目の前で真っ直ぐ振り落とした。何とか危機一髪、避ける事に成功した。


でも、倒されるのは時間の問題だ。


「クロン、逃げようよ……」


「俺はお前を逃がさない……。10年間、ずっとこの森に閉じ込められているのだから」


「ビラ、僕がコイツの相手をするから。ビラだけでも逃げて……」


「でも……」


「大丈夫!!僕は負けない……。言っただろ。お前の事は死んでも守り抜くって……」


「クロン、絶対にまた会おうね」


「うん」


刀同士がぶつかる音が後ろで聞こえてくる。


私が弱すぎるから……。


私が何も出来ないから……。


クロンは私を守ってくれた。私は涙を流しながら、とにかく遠くに走って逃げた。


ガサッ


目の前に緑色のゴブリンが現れた。レベルは10。もうクロンはいない……。


私、1人で倒さないといけない。力を込めて魔法の杖を前に出し、


「炎の魔術!!」


と森の中で叫んだ。魔法の杖から出る炎は前回よりもさらに強く激しく燃え、ゴブリンを一撃で倒した。


でも、その反動は大きかった。私は体力を失い、座り込んでしまった。


倒れたゴブリンは3つの記憶のカセットを落とした。スマホから回復の薬を取り出し、飲んだ。


体力が回復していく。宝箱で回収してて良かった……。そう思いながら、記憶のカセットを回収した。


これで記憶のカセットが10枚……。ついに1枚の写真が完成する。


スマホに記憶のカセットを入れて、出来た1枚の写真。その顔はクロンにそっくりだった。


そうだ。思い出した。名前は確か……海斗。私の初恋の相手だ。


それと同時に私の名前も思い出した。私の名前は真澄。


『名前は真澄……。でも、もう死んでいるらしい』


クロンが言っていた言葉。クロンの好きな人は私の事だったんだ……。


その瞬間、海斗との記憶が蘇ってきた。


〔現在の記憶のカセットの枚数 10枚〕

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