【旧】異世界転生した私はもう1度現実世界に戻るために3つのミッションに挑戦する
緑のキツネ
第1章 【剣士】を倒せ!!
第1話 異世界転生
ここは東京駅。
「もしもし、お父さん。早く帰ってきてよ」
電話の向こう側に愛する娘が待っている。早く帰らないといけない……。
でも、僕が勤めている会社の仕事の打ち合わせで飲みに行く約束をしてしまった。
飲んでいるといつのまにか時間は22時を過ぎていた。僕は娘がいるからという理由で途中退室して、今、駅のホームで電車を待っている。
今日は娘の誕生日だからどこかでケーキを買わないといけない。こんな時間でもやっているお店はあるかな?そんな事を考えていた。
電車が来るアナウンスが始まった瞬間、後ろの人に強く背中を押され、駅のホームから落ちてしまった。目の前にくる電車……。僕はゆっくりと目を閉じた。
お父さんが死んだ……。
0時を過ぎた頃、私の家に来た1本の警察からの電話。そこで、お父さんが死んだ事を伝えられた。
お父さんを駅のホームから落とした犯人はまだ捕まっていない。あの人混みの中、監視カメラにも映っていなかったらしい。
それから、1年が経った今でもまだ捕まっていない。未解決事件として保留となった。
「お父さん、今頃何してるのかな……」
高校から家に帰る道で、そんな事を考えていた。部活終わりの為、暗い夜道を歩いていた。
私の歩く音と別の歩く音が後ろの方から聞こえてきた。私が走ると、後ろの人も走ってくる。
私は勇気を出して後ろを振り向くと、そこには20歳ぐらいの男が立っていた。暗くて顔はよく見えなかった。
「あなたは誰ですか?」
「私は……お前を殺しにきた」
その瞬間、ナイフを片手に持った男が私の近くまで襲ってきた。
あまりの怖さに逃げることが出来なかった。ナイフが胸を刺そうとした瞬間、私はゆっくりと目を閉じた。
目が覚めるとそこには緑の平原が広がっていた。
「ここはどこだろう……。あれ?私って誰だろう」
私の体に違和感を感じる。胸は大きい……。太ももは細い気がする。私の顔ってどんな感じなんだろう?
周りを見渡すと、私のすぐ近くに川があるのに気づいた。
川の方に近づき、私の顔を初めて見た。髪はロングヘア。目は思ったより小さい。私って意外と可愛いのかな……。
「異世界へようこそ」
どこからか声が聞こえた。でも、辺りを見渡しても人間の姿は無い。気のせいかな……。
「早く気づいてよ!!私に……」
足元を見ると、青い色をした手のひらサイズのスライムがいたのに気づいた。
「君、可愛いね」
「ありがとう……」
スライムが喋った……。私はその現実を受け入れる事が出来なかった。
ゲームの中ではスライムは喋っていたけど。あれ?そもそも何でスライムがここにいるの?
「改めまして、異世界へようこそ」
「異世界?そもそも私は誰なの?」
「あなたはビラ」
ビラ……。響きはかっこいい。
「何で私の名前を知ってるの?」
「あなたが異世界に来る時に神様が名前を付けてくれたのです」
神様か……。いつか会ってみたいなあ。
「何で私はここにいるの?」
「あなたは現実世界で死んだことで異世界に転生してきたのです」
私が現実世界で死んだ……。私はまだ15歳。死ぬなんて考えたこともなかった。
生きているのが当たり前だと思っていた。どうして私は死んだのだろうか……。
「もう現実世界には戻れないの?」
「戻ることはできます。この世界でミッションを3つクリアすれば……」
「ミッション?」
「今からあなたには【剣士】【狙撃手】【商人】【魔法使い】の4つから職業を選んでもらいます」
この4つの中だったら……。やっぱり可愛い魔法使いかな。
「【魔法使い】でお願いします」
その瞬間、私の服装が一瞬で魔法使いになり、魔法の杖を右手に持っていた。軽く振るだけで、先端が光り始めた。
「【魔法使い】の1つ目のミッションは、【剣士】を1人でもいいから倒すこと。あと、これあげます」
そう言って、スライムが口から出したものはスマホのようなものだった。でもスマホの下のほうに大きな横に長い穴がある。
「これって何ですか?」
「敵を倒すと、敵は『記憶のカセット』を落とします。それをこのスマホの横長の穴に入れることで、記憶を取り戻すための写真の一部となり、10枚で1枚の写真ができます。100枚集まれば、すべての記憶を取り戻すことが出来ます。その記憶のカセットの枚数がレベルになります」
「分かった……」
「じゃあ検討を祈るよ」
そう言ってスライムは遠くの森のほうに消えていった。私は何も分からないまま、とにかく森の方に歩いて行った。
森の中に入ると、モンスターの足音が聞こえてきた。そして、目の前に大きなイフリートが現れた。
レベルは20。あまりの大きさに私は倒れ込んでしまった。もう無理だ。私が諦めかけた瞬間、
「やめろー」
剣で一太刀。イフリートを一撃で倒したのは1人の少年だった。
倒したイフリートから記憶のカセットが5枚落ちた。それを全てその少年が拾った。
「大丈夫ですか?」
彼はレベル40の【剣士】だ。今、隙を見て倒す事が出来れば、私は現実世界に帰る事が出来る。
でも、レベル差がありすぎる。このまま、戦っても倒されるだけだ。それなら……。
「あの……私と同盟を組みませんか?」
彼は私の顔を見て静かに頷いた。私と目と目が合った時、心臓の音が早くなる。
私は彼に一目惚れをした。でも、スライムの言った言葉が蘇る。
『【魔法使い】のミッションは、【剣士】を1人でもいいから倒すこと。あと、これあげるよ』
彼は私の敵だ。いつか彼を倒さないといけない日が来るかもしれない……。
〔現在の記憶のカセットの枚数 0枚〕
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