第5話 抜き打ち
お昼休み。
ボッチ飯を満喫している僕は人気者になって一週間が経過した。
えっ? なんで誰も誘ってくれないの?
べ、別に他人とお喋りしながら食べる飯は羨ましくもなんともない。
唾が空中戦を繰り広げる中で弁当を食べたいとも思わないしね。
衛生的に考えれば集まってお喋りしながら食べるのは汚い行為だ。
そうだよ、アイツらは友人とのコミニケーションと引き換えに、代価としてお弁当を差し出しているのだ。
僕はそんなこと絶対やりたくない、ボッチ飯サイコー!
僕がボッチ飯について考えていた時にバンッ! と、大きな音が鳴る。
音の正体を探る為に顔を上げると教師が見るからに怒った形相で教卓を叩いていた。
「今から抜き打ちで持ち物検査を行う」
ワイワイとしていたクラス中が一気にシーンと静まり返る。
みんな頭の中で何を持ってきたのか考えているんだろう。
僕は優等生だから関係ない。
大昔は厳しかったらしい学校の規則、今では何がアウトなのか分からないぐらいに緩い。
「このクラスに煙草を持ち込んだ生徒が居ることは分かってる」
……それはアウト! 煙草が見つかれば一発で退学じゃないか。
苦労して入った高校にそんな危険物持ち込んだバカは一体誰なのか。
周りを見渡しても誰も……と。
清楚ギャルの赤星さんに目が止まる。
この前ボッチ飯中に聞き耳を立てていると誰かが言っていた。赤星さんはハーフらしい。
目の色も青で金髪、薄くメイクをしていて、オシャレで巨乳で清楚ギャルで可愛い。
でも周りが真面目で赤星さん目立つ。そして少し浮いて見えるからか、一番煙草を持ってそうだなと思った。
教師がチラチラと見てるから大体目星を付けてきたんだろう。
赤星さんが気になって様子を見ているとバックを机の上に置いて漁り始めた。
余裕顔でカバンの整理をしているからたぶん赤星さんじゃないな。
僕がそう思うと赤星さんの腕がピタリと止まる。
大きな瞳を更に大きくしていた。予想外の物があったようなリアクションだ。
まさか煙草?
僕もカバンを机の上に置き、カバンを開ける。
煙草のカートンが二個下に埋め込まれるように設置してあった。
何の陰謀だよ。
教師がチラチラと見ている中に僕が居ることも分かった。今日僕は机から離れていない。
考えられる方法はテレポート。
だがテレポートで送ろうにも煙草のフィルムは能力を制限する繊維が編み込まれていて能力開発段階の高校生じゃテレポートで送るのは無理だ。
言い逃れができない。
校内放送から大音量にBGMが流れ出した。スキルキャンセラーだ。
学校側が予め落とすように仕組んだ抜き打ちテストが失敗して、全員合格にしたからこその措置だと思う。
僕の学園生活が詰んだ。
じいちゃん子で見習う事など殆どないダメ人間だったおじいちゃん。
でも一緒に居ていつも笑顔と元気を僕にくれた。僕の能力を詐称したのもこのじいちゃんだった。『
小学校の終わり頃にじいちゃんが亡くなって、元気を無くしたお婆さんにじいちゃんの分の恩返しがしたくて勉強も頑張った。
人に迷惑をかけない事を前提に僕はじいちゃんから一つの事を学んだんだ。
「バレなければいい」
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