オレ ガ アノコ オ テ ニ イレルマデ。
奈那美
第1話
(あの子、可愛い!)
それが彼女に対する第一印象だった。
彼女を初めて見たのは、オレが通ってる大学の学食だった。
急な休講で、ヒマを持て余していたオレは、高校からの親友…サトルとコーヒーを飲みながら、喋っていた。
そんな時に一人の女性が、友人とおぼしき女子数名と、学食に入ってきたのだ。
小柄で、肩のあたりで切りそろえたボブヘアで。
健康的な肌色に化粧っ気はなく…一緒にいた少女たちと比べると、お世辞にも可愛いとは、言えなかった。
服装も、無地のアースカラーのTシャツにデニム地のスカート。
周りの子が主張が強いデザインのTシャツや、賑やかな模様のチュニックなどを着て、しっかり化粧もしている中では違う意味で目立っていた。
正直な話、地味な子だなとも思った。
それでも、なぜか、彼女から目が離せなかった。
オレは、彼女が券売機で食券を買い求め、カウンターに並ぶ姿を目で追っていた。
その視線に気がついたサトルが言った。
「お前さ、なに見てんのよ?」
「え?いや、べつに」
「うーそーつくなって。あそこのコたち、見てたんだろ?どのコがタイプよ?」
サトルは、彼女たちのほうを、あごでしゃくるようにした。
「あの髪の長いコ?それともゆるふわのコ?」
「だから、ちがうって」
「まさか、あのポニーテールのコ?いや、たしかにあの中じゃ、一番美人だけど。絶対に無理!お前には高望みだって」
「だから、さっきから、違うって言ってるだろ?」
「そうか?なら俺の気のせいか。まあ、いいけど。間違っても、残ったあのちんちくりんじゃないだろうしな」
「!!ちんちくりんだなんて、失礼だな!!」
「え?」とサトル。
「え?!」とオレ。
「えええええええええ!!!!」
サトルが、驚きの声を上げる。
「おまえ、うるせえ!しずかにしろって!」
オレは、サトルをおさえこんだ。
騒ぎをいぶかしんで、彼女がこっちを見るんじゃないかとひやひやしながら、サトルをおさえつづけた。
すっかり冷めたコーヒーをカップからひと口すすり、やっと落ち着いたサトルがオレに言った。
「おまえ…本気か?」
こうなったら、シラを切っても仕方がない。
オレは、小声でサトルに返した。
「悪いか?ひとめ見て『可愛い』って思ったんだから、仕方ないだろ?」
「そりゃあ、そうなんだが。あのコのこと、知ってるのか?名前とか学年とか」
「いや、今日、初めて見かけた」
「まあ俺たち4年は、めったにこんなとこ来ないからな」
「ああ」
続
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