魔弾の射手 異世界拳銃無宿

もりおかねた。

第1話 ギルド編 その1 仮登録 

〝東の都〟王国の王都北部にある【プリンス】と呼ばれる町。


とある建物の前に立つ、ソンブレロのような帽子を被った少女。 

持っているメモと建物のシンボルマークを見比べている。


「やっぱりここでよかったんだ。」


建物の入り口にある、勇猛そうなミミズクの彫刻がどうやら看板らしい。


「ちょっと外で待ってて。」


後ろにいる〝連れ〟にそう言うと、少女は入り口に入っていった。


「ハンターズ・ギルドへようこそ! 今日はどういったご用件でしょうか?」

と、言った直後、手で鼻を覆った受付嬢。


確かに、少女の身なりは汚れていて衣服もズタボロな状態だった。


「武器を所持していたら、必ずハンターギルドへ登録しなければならない・・・と、

言われましたので。」


「まぁ、どなたに? 名前、思い出せませんか?」

鼻をつまみながら話すと、あのテツコさんの声に似てしまう受付嬢。


「確か・・・ 鍛冶屋の・・・ グーグゥさん・・・だったような・・・」


「え、ええ??  ちょっとお待ちください!!」


受付は誰もいなくなった。  困惑する少女。


漂う悪臭に、たまらず外へ避難するハンターたち。


何やら外が騒がしい。

「やっぱりそうだ!!モンスターだよ、あれ!!」


その声に反応したかのように外へ出る少女。


見ると、廃材が捨ててある狭い袋小路に人だかりができていた。

「うわぁ・・・見たことないヤツだ。」

「誰か、ギルマス呼んでこいよ!」

「依頼出てないのに討伐しちゃったら・・・確か違反だったよね?」

「でも、この状況・・・ヤルしかない・・・だろ。」

「気を付けろ・・・キッついカウンターがあるかも知れんぞ。」

「つーか、攻撃してこないな。」


人だかりのせいで袋小路の状況を確認できないでいる少女。

そこへ・・・


「おう、おうっ! 何の騒ぎでい!!」

その独特な口調の大声が袋小路の人だかりを一瞬静かにさせた。


「おやっさん、大変なんだ! そこにモンスターがいるんだよ!!」


「被害、出てんのか?」


「いや、今、にらみ合いしてるだけっス!」


「ちょっと見せてみろ。」


「いや、おやっさん、危ないっスよ!!」


「・・・んん??」

人だかりの中にソンブレロ風の帽子を見つける、おやっさんと呼ばれる男。


「もしかして、嬢ちゃんかっ!?」


その声に反応した、ソンブレロ風の帽子を被った少女。

「あ、グーグゥさん!? あたしです!!」


「そうか!! ・・・ってえ事は!」

と、袋小路をのぞき込むグーグゥ。  様子を確認すると・・・


「皆の衆!ここはもう大丈夫だ!この場はいったん引いてくれ!」


「まぁ、おやっさんがそう言うんなら。」

「何かあったら言ってくださいよ!」

「向こうが手出ししてこなかったから良かったもの・・・」

「もう、いいじゃねえか。行こうぜ!」

「ギルマス、どこ行っちゃったんだよ・・・」

袋小路にいた人だかりは、それぞれギルドに戻ったり軒を連ねる出店の方へと散って

行った。


「グーグゥさん、ご無沙汰してます。 あの・・・」


「登録だろ? それよりも、お嬢ちゃんのドロドロ汚れを落すのが先だな。」


「え、ええ??」


「ほら、おめえらも来い。」


狭い袋小路の奥から現れたのは・・・


台車に乗せられた、いかにも宝箱といった形の宝箱(?)。


それを押す、見た目そのまんま恐竜かリザードマンに似たモンスター。

褐色の、アルマジロのように細かい鱗。

台車を押している腕が小さく見えるのは、足が長く大きいせいだった。

ほぼ真っ黒な瞳がキョロキョロと周囲を見渡している。


「おめえも入れるぞ! 大丈夫だ! 来いよ!」


グーグゥの呼びかけに動き出した、ゆうに2mを超えているモンスター。

てっぺんに一本の尖った飾り物が付いた古めかしい半頭型のヘルム。

だが、それを被っている下のマント(?)は体全体を覆い隠し、顔も見えない。



「ああーーッ、グーグゥさん!!探しましたよーっ!!」

息を切らす受付嬢。


「おう、どうしたんでい!」


「はあ、は・・・ すぐに仮登録、済ませちゃってください!」


「なんでえ、明日じゃダメなのかよ?」


「一日でも過ぎちゃうと、処罰の対象になってしまうんです!武器不法所持で!」


「おっと、ソイツはいけねえ!」


少女とモンスターたちはギルドの別室に通された。


「先にステータス計って仮登録しておけば、試験(トライアル)は明日からでも

問題無いですからね。」


「そうだったんかい。だったら、嬢ちゃん先に済ませてしまいたいんだけどよ。」


「そうですね。そうしましょう。」


少女は名前を記入する欄に自分の名前を書いた。


      ・ パティ・サンバ ・














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