ショートショート 一話完結まとめ
ちキ
愛出夏 目久【めでか めいく】
いじめられてた私はさっき転校してきたばかりの、愛出夏さんに学校の女子トイレで顔を凝視されていた。
「な、なんですかぁ、いきなり」
「イヤーマジで素材いいよね〜メイクやらして!」
まぁいいの、顔に落書きされる事慣れてるから……
「あんた肌綺麗だから下地とか省くね〜」
そう言いながら愛出夏さんはポッケから二刀流の侍のように、ホッそい私が見た事がないような黒い筆みたいなのと、毛虫みたいな物をとりだしたが、私は薄目で見ていたのでそれが具体的に何かは分からず余計何をされるか分からない恐怖に襲われた。
大丈夫この拷問に耐えればいいだけ……と心の中で唱えながら私は目を瞑り、愛出夏さんは早速私の顔面にお絵描きを始めた。
「アイライナー引く前にパウダーで目尻に下書きしてそんでからメチャ長く引く、そんでからつけま目からはみ出すくらいつけて、流行りの地雷盛りラインを引いたら目はオケ。あとはブルベ夏用のリップで顔面の血色感足して眉マスカラシュッ…そんでシャドーとハイライトで―――完成!!!」
思わず私は、えっ、と声を出した。これって自分の顔だよねと何度もほっぺをつねったり鏡を見たりで確認するがそれは私の顔だった。こんなの愛出夏の前で今言えないけど産まれて初めて自分を可愛いって思った。
「ねー!ちょー可愛いでしょ」愛出夏さんは自信満々そうに私の顔を覗き込んできた。その時ゆるふわに巻かれた長い髪から優しい香りがし、いい香りと口に出してしまった。
「わわわ!ごめんなさい突然変なこと言っちゃって」
「いいよ〜確かサンプル、ポーチん中入ってたから使ってみる?」
どこだったっけな〜と独り言を言いながら愛出夏さんはピンク色の派手なポーチをガサゴソあさる。時々デコったっぽいプリクラとか、ふぁさふぁさしてるつけまつげとかが出てきて、女の子エンジョイしてるな〜と羨ましく思った。
「手首とね、首と余ったやつはテキトーに脚とかにこすりつけんの」香水の付け方を丁寧に実演して見せてくれた。
自分も真似してやってみると、「おおおお!!!!マジいい感じじゃん!帰りさぁープリ撮りに行こ」とめっちゃ褒められた上にプリクラまで誘われてしまった。
とりあえずパフェ食べて、プリ撮って、オソロのイアリングも買おう!それからね……
愉快に話す愛出夏さんを横目に私は下を俯いたまま、聞きそびれた質問をしようか、しまいか、考え込んでいた。
そんな私の事さっしてか、愛出夏さんは声高らかに「私かわいい物が大好きなんだ〜だからねあなたの事も好きーぃ」と私に抱きついてきた。
久しぶりに他人からの温もりを感じて涙が出そうになった私は、私の首辺りに当たる二つの柔らかいかたまりと、自分がもつ二つのアポロチョコレートを無意識に比較して、涙が引っ込んだ。
そして高校入学の夏、私はモデルになり日本中のインフルエンサーになった。恋愛番組に出させてもらったり、彼氏が出来たり、前だったら考えられないくらい幸せな時間を過ごしていた。
愛出夏さんは高校進学しないで、私たちは別々の道に進むことになったけど本当に彼女には感謝してるし、私の永遠に大切な友達。
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