第17話

 勇者との一件も漸く落ち着いた。まさかカジノ街であそこまでの騒動に巻き込まれるとは思わなかったが、俺自身もライズと話せて良かったと心から思う。


「ネロ……あのライズとかいう小娘はなんだ……?」


 これからを戦う覚悟もきちんと備わった事だし、俺は俺で万全を尽くそう。


「おい、聞いているのか。どういう関係なんだと聞いているんだが」


 人間関係類の問題はこれまでだ。目指すは魔王討伐。一直線で行こう。


「貴様からあの小娘の匂いが――――」


「ああもう! うるせえんだよ! もうそういう色恋沙汰は全部終わってからだ!」


「色恋……そういう関係……か?」


「ひっ!?」


 諫めたつもりだったが逆に首根っこを掴まれてしまった。もう嫌だ、一人だった時期に戻りたい。


「ベルデが俺を好きなのは分かったが……」


「好きではない」


「だったら何も聞かなくていいな。じゃあ拠点を移そう」


 宿の部屋から出ようとすると服の裾を掴まれる。本当に面倒臭いツンデレを発揮してくれるものだ。


「う、うわっ! 何をする!?」


 ベルデを勢いよく抱き締めながら頭を撫でる。もう禿げるぐらい撫でてやる。一生分だ。


「好き好き好き好き、大好き。マジ可愛い、ホント大好き――――」


「わ、分かった! もういい、離れろ馬鹿め!」


 やはりベルデは扱い易くていい。おまけに可愛いとくればこれ以上のマスコットはいないだろう。


「それじゃあ俺は家に戻る。ベルデはどうするよ?」


「家……とは、魔王城のことか?」


「そうだ。嫌ならこの街で遊んでろよ。後で迎えに来る」


「いや……我も同行しよう。時間も経って落ち着いた。以前までの自分を取り繕ってみせよう」


「そうか……まあ、無理はするな。極力、魔王の奴には近付くなよ。勘付かれちゃマズイからな」

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