闇竜転生〜魔王軍幹部に転生した俺は前世の知識を利用して破滅を回避し、成り上がる
本庄缶詰
第1話
俺は今、とあるゲームに夢中になっている。
――――
オープンワールド型のRPGで発売前から多くの期待を博していた。
マップ自由度。キャラクターの拡張性。ある程度の骨組みのあるメインストーリー以外では基本的に何処にでも行けるゲーム。
その自由度の高さから一般プレイヤーからも、タイムアタックをする類のプレイヤーからも多くの支持を受けていた。
前述した通り、俺は今このゲームに夢中になっていた。発売日には有休を使い全クリし、今ではタイムアタックで記録更新争いに参加する程だ。
俺のゲーム配信を覗きに来る視聴者は時間毎に変動し、今は深夜のメイン視聴者が残されていた。コメントの流れも速度を増している。
「ハァ……ハァ……もう少しで……」
俺のこの【全実績解除RTA】も二十三時間を超えた。物語も佳境に入り、後はイベントで最強状態に突入したラスボスを倒すだけだ。
数々の再走から換算して既に七十二時間程度は起きているだろうか。朦朧となっている視界もゲーム画面とタイマーだけは鮮明に映し、最後の力を脳味噌から絞り出す。
配信のコメント欄も盛り上がり、遂にラスボスへと最後の攻撃が入る。クリティカルエフェクトが目に突き刺さるが、コレで本当に終わりだ。俺は遂に全実績解除世界最速の称号を手にした。
「やった……タイム……更……新……ふぁ……」
タイマーストップした瞬間、俺は寒い様な温かい様な、不思議な感覚に身を包まれる。
*
「アレ……? ごめん、寝ちゃってたかも」
一瞬の意識のブラックアウトの後、暗い部屋で目を覚ます。何だか何時もより調子が良い。机に突っ伏して寝た筈なのに体のどこも痛みを感じていないなんて。
「今何時だ……って……ええ?」
明瞭になった視界から見えてくるのは全く別の景色。薄暗い一室はベッドやドレッサーなど最低限に配置され、壁には悪趣味な光り物が並んでいる。
「コレって……」
鏡を見る。そこに映っていたのは黒髪に紫の瞳を持つイケメン。コイツの見た目には見覚えがある。
ゲーム序盤から暗躍を続け主人公を陥れ続け、様々な負けイベントを強要してくる相手。何度コイツのイベントムービーがスキップ出来ずにブチギレそうになった事か。
強くも無く、弱くも無く、ひたすらに鬱陶しいというのがゲーム内での性能の話。ストーリー上では大概の敵がネロを起点にして襲ってくる。同じ幹部である六魔天ですらコイツの手の平の上で踊らされる始末。
トリックスター。オリジナル笑顔。いつもの。例のアレ。
様々な名で呼ばれるある意味人気キャラ。
狡猾で仲間からも嫌われ、最後はラスボスである魔王に吸収されてエンド。ESの裏の顔とも呼ばれているのがこのネロ=サウザンドというキャラクターだ。
そんなキャラクターの体に今――――俺は入り込んでいる。
「もしかしてコレって――――異世界転生ってヤツ……?」
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