第38話

トンボになっていた。

 目の前の人間は指をくるくると回して、わたしの目をまわそうとしている。

 捕まると羽を左右に引っ張られた。

「やったあ当たりだ!」

 なんのこと?




雨が降ってきた、いや、違う。

 人間がわたしたちの巣にじょうろを使って水を入れているのだ。

 わたしは蟻になっていた。

 そんなことをして何が楽しいんだろう?

 ひどいと思わないの?

 わたしたちをなんだと思っているの?

 やめて。

 やめて。

 なんて残酷なの。

 あれ、またここに来ている。

 わたしは闇を漂っていた。

 膝を抱えて、くるくると回っていた。

 は……な。

 はな……

 花……

 誰の声だろうか。

 知っている。

 わたしはこの声を耳にしたことがある。

 キョロキョロとまわりを見回す。

「だれ?」

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