第37話

暗くて冷たい泥の中に漂っているのだろうか。

 闇の中にいるのだろうか。

 わたしはどうなってしまったのだろうか。

 死んでしまったのだろうか。

 ただ両手で握りしめた物の温かさだけを感じていた。




 あれ?

 あれ?

 わたしは草を食(は)んでいた

わたし牛なんだ。

 一日中草を食んでいた。

 人間の子供たちが沢山厩舎にやってきた。

 こっちを見ている。

 なんだろうか。

 近くにいた一人の女の子の手をペロリと舐めた。

「わあ!」

 その子はびっくりしていた。

 わたしだった。




 仲間が沢山いる。

 鉄の狭い柵で道が作られて、牛たちが列をなしていた。

 牛たちの鳴き声が聞こえる。

 ドコに行くのかな?

見知らぬ人間に順番に一頭ずつ連れて行かれている。

 何をしているのかな?

 

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