第19話

「萌ちゃん!」

 萌は空中から花の近くにおりた。

「どうしたの?」

「ポポンが何か怖いものが来るって」

「怖いもの?」

 ポポンがはす向こうの物陰を見て震えだす。

「あそこポポ!」

ポポンの声は怯えていた。

 少女二人はパッと振り向く。

 ポポンは水晶の中に戻った。

 そこからぬっと人影が現れた。

「こんにちはお嬢さん方」

見知らぬ男が歩み寄ってくる。

萌「あなた、だれ」

「とおりすがりの体操のお兄さんだよ」

明るい声で話しかけてくる。

萌「ちょっと近づいてこないでよ!」

 その男は萌の言葉を無視して近づく。

「体操のお兄さんは嫌いかな?」

 花は萌の袖を掴んだ。

「さあ、一緒に屈伸をしよう!」

花「萌ちゃん、この人あたまおかしいよ」

萌「うん」

 萌は花の手を取って後ろを向いて駆けだした。

「こらこら、逃げない逃げない、体操しようよ」

男が腕をブンッと振るった。

 廃工場の開いていた入り口や窓が全てバタンと一斉に閉じられた。

 光が入って明るかったはずの建物内は、光のほとんどささない暗がりの洞穴と化した。

 二人はつんのめる。

 男の方を見た。

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