第19話 多様性
あなたが体調を悪くした。
わたしは心配しているのにあなたは全然わかっていない。
「ねえ、大丈夫なの?」
「ん? 大丈夫だよ。久しぶりに休んだらすっかり元気だよ」
「そう、ならいいんだけど。ねえ、わたし、こないだおかしなものを見つけたんだけど」
「ん? またなんだか見つけちゃったんだ。んで? なに見つけたの?」
「ヴィーガンサンダル!」
「は? なにそれ?」
「ね、面白そうな響きでしょう?」
「それはなんですか?」
「動物の皮を使っていない植物で作ったサンダルよ」
「それ、わらじじゃん」
「ん? ああ、まあそうすね」
「でさあ、前々から気になってんだけどさ。なんで植物はいいの?」
「え? そりゃ動物には感情とかあるからなんじゃない?」
「おかしなこと言いますね。麻の気持ちを考えろって話だよね。踏まれてよじられて結ばれて編まれてってそのほうがよっぽどかひどいだろうに」
「なに言ってんの?」
「動物はだめで植物はいいって意味がどうしてもわかんないんだよ。殺すことがだめなの? 使うことがだめなの? なにがだめなの?!」
「いや、そのへんはきっといろんな考え方があるんじゃない?」
「ま、多様性か。あれだな、きっとここから先いろんな物を大切だってなってそれを認めろってことになるんだろうな」
「ヴィーガンサンダルからまたエラいことになりましたね。やっぱりまだ調子が悪いんだと思うよ?」
「そっか。体調悪いのか、これ」
「いろんな考え方があっていいとは思うけどね」
「そうだね、ま、とりあえずどんな考えかたしても別にいいと思うけど、押し付けるなって思うけどね」
「押し付けるな? ああ、あなたらしくなってきましたね」
「そうよ。別になにが大切かなんて人それぞれ。当たり前だよね。だけどさ、自分が正しいから従えってのはおかしいよね」
「そうだね。あ、夜ね、わたしの大好きなしいたけがたくさんあるんだけどさ。全部に入れてもいいかね?」
「んなっ!? なに言ってんの! だめに決まってるでしょ!」
「さっき人の大切にしているものを認めるのが多様性って言ってたよ?」
「それはそれ、これはこれ!」
いつものように笑いあう。
いつものように
わたしはあなたのことが好き。
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