第52話 日笠と一緒にお昼ご飯⓵

 という事でしろねこさんとオフ会をする事が決まった次の日。


「うーん、どうしたもんかなぁ……」

「ど、どうしたんですか、先輩?」


 昼休みに俺はいつも通り部室で昼飯を食っていたら、今日も後輩の日笠が部室にやって来た。なので今日も日笠と二人きりでお昼ご飯を食べていた。


「ん? あぁ、いや。実はちょっとさ、今週の土曜日に……“親戚の女の子”と会う予定があるんだけどさ」


 本当はしろねこさんとのオフ会をする日なんだけど、でも女の子と二人きりで遊んでくるって日笠に言ったらめっちゃ動揺させてしまう気がしたので、俺は敢て“親戚の女の子”と嘘をつく事にした。


「へぇ、親戚の子と会うんですね! その親戚の子とは結構な頻度で会うんですか?」

「いや、その親戚の子はちょっと遠い所に住んでるから滅多に会わない子なんだ」

「なるほどー。あ、それじゃあ……もしかしてその親戚の子と何処に行こうかを悩んでいる感じですか?」

「あぁ、いや違うよ。行くところに関してはもう事前に決めてあるからさ」

「あ、そうなんですか?」


 とりあえずしろねこさんとのオフ会ではお昼前くらいに集合して軽く昼ご飯を食べてからその後はゲーセンに行くという流れで決まっていた。ゲーセンに行った後の流れは……ふふ、まぁその時の雰囲気で決める事にしよう(意味深


「って、あれ? でも、それじゃあ先輩は一体何についてを悩んでいたんですか?」

「うーん、まぁ単純な話でさ……女の子と二人きりで遊びに行く時に着ていく服が全然わからなくて悩んでたんだよ」

「あぁ、なるほどー……なるほどっ!?」


 俺がそういうと日笠は驚いたような表情をしてきた。


 俺はしろねこさんに対してセクハラしたいがために超ミニスカートをお願いしたんだけど、でもそういえば俺の服装については何も考えていなかったんだ。しろねこさんにも俺の私服に関しては何のお願いもされていなかったしさ。


「え……えっと、その……先輩が会いに行くのってその……親戚の子なんですよね? そ、それなのに、そ、その……服装を拘る必要はあるんですかね……?」

「え? いやまぁ、それはそうなんだけどさ」


 いや、本当に親戚の子と出かけるだけならいつも通りの私服で良いんだけど……でもせっかく女の子と遊ぶんだったら、ある程度は女子ウケしそうな服装がいいなって思うのが男の性ってものだろ。だから俺は土曜日に着ていく服装を考えている所だったんだ。


「あ、それじゃあさ、もし日笠が男の子と二人きりで遊びに行くって時にはさ、相手の男の子にはどんな服装で着てもらいたいとかってあったりするか?」

「え……えぇっ!? そ、それって……その、デートっていう意味で良いんですかね?」

「あぁ、それでいいよ」

「そ、そうですか……そ、それじゃあ……え、えぇっと……」


 俺がそう尋ねると日笠は頭を悩ませ始めていった。そしてそれから数十秒後にようやく日笠は口を開いていった。


「そ、そうですね……で、でもやっぱりアレですかね……そ、その、先輩がいつも着て来るようなシンプルな服装が……私は好きです……」

「え?」


 日笠は顔を真っ赤にしながら俺に向かってそんな事を言ってきた。


 確かに日笠とはサッカー部の打ち上げとか、休みの日に備品購入をしに行ったりとかで、日笠とはお互いに私服で会う頻度は今までにもちょくちょくとあった。でも俺がいつも着ている服装って……。


「い、いやあんな俺がいつも着てる服なんて大量生産品の安物の服だぞ? あんなのオシャレでも何でもないだろ? せっかくのデートなんだからもっとオシャレな服を着て行ってほしいとかあったりしないのか?」

「い、いえ、そんな事ないです! 先輩は。そ、その……身体がシュっとしていてスタイルがとても良いので……だからああいうシンプルな服装がとっても映えてます! だ、だからその……私は先輩のそういう服が……す、好きなんです……!」

「そ、そうか……なるほどな」


 日笠にそう力説されてしまったので、俺はもう頷く事しか出来なかった。


 でも今の日笠の回答って“俺とデートをする時にどんな服装をして貰いたいか”を答えてる気がするんだけど……まぁ別にいいか。

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