クソ親類・クソ両親・連続屠殺(1)

「ただ今、帰りました」

 私は玄関で、そう言った。

「どうしたの、遅かったじゃない?」

 家に上がるとダイニング・キッチンの方から母親の声。

「どこ行ってたんだ?」

 続いて父親。

「はい、お祖父じい様の道場で稽古を付けてもらった後に、博多の藤田の伯父様の家に……」

「そうか……。そうだ、話は変るが、高校を卒業したら、そろそろ結婚相手を決めてだな……」

「早過ぎますよ。いくら何でも……」

「だが……俺も仕事が忙しいんで、次に一家揃うのがいつになるか判らんしな、早めに言っておいた方が……」

「あなた……ですけどねえ……」

「いや、でも……家の後継りは男だろ。ウチの会社の若いのか、父さんや義兄にいさんの秘書で優秀なのを婿養子にしてだな……」

「お父様」

 必死だった。

 胸の奥底から溶岩のように湧き上がる怒りを必死で隠して……何年も演じ続けた「良い子」のフリを必死で続けた。

「何だ?」

 ダイニング・キッチンに入った私は……。

「うがああああッ‼」

「うわあああッ⁉」

 私の絶叫と共に、ダイニング・テーブルの足の内、2本が床から離れ……。

「えっ?」

「ぐへぇ……」

 父親は椅子ごと倒れて、ダイニング・テーブルに押し潰される。

 笑える。

 まるで石に潰された蝦蟇がまがえるだ。

 でも……よかった……まだ、生きてて意識が有る。

「ああああ…………」

 母親は、まだ、状況を理解していない。

「『そろそろ、結婚相手を決めろ』? 他家に養子に行かせたとは言え……実の娘の命日にする話ですか?」

「あ……あ……あ……」

「藤田の家も同じ……他家からの養子とは言え、娘の命日である事を、すっかり忘れ去っていた」

「え……えっと……」

「それに……この食事……。娘の命日にしては、随分と豪勢ですね」

 私は、ダイニング・キッチンの床に散らばった夕食を指差す。

「教えていただけますか? 私の最愛の妹である礼子は……本当は、どこに消えたのですか?」

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