第5話 一方その頃 Side千陽
引っ越しの荷解きを済ませた元気君がお風呂に入っている間に、私、
「ふんふんふふーん」
鼻歌を歌うくらい上機嫌。
無理もない。
だって……ついに……ついに同棲生活が始まったんだからぁぁぁぁー!!!
私は心の中で、飛び跳ねるほどに舞い上がっていた。
付き合い始めて三年半、ようやく始まった同棲生活。
お父さんにバレたら大変なことになるけど、今はそれよりも喜びや嬉しさの方が大きかった。
ほんと、タイミングが良かったとしか言いようがない。
ルームシェアしていた女の子が、家族の事情で地元へと帰ることになり、たまたま舞い込んだチャンスを逃さまいと、勇気を振り絞って元気に提案したのがきっかけ。
元気君も元気君で、時期を考えていたらしく、話しはトントン拍子に進んでいった。
棚から牡丹餅とは、まさにこのことを言うのだろう。
加えて、探し出した物件も、比較的新しい部屋を探すことが出来たし、お互いの職場からも中間地点にある好立地。
そして、ついに迎えた同棲初日。
ひとつ屋根の下で一緒に暮らすというだけで、ドキドキと不安でいっぱいだった。
けれど二人切りになった途端、そんな不安はあっという間に吹き飛んでしまった。
私は今まで溜め込んでいたものをすべて解放するようにして、思い切り元気に後ろから抱き着いたのだから。
「さっきは気持ちが昂りすぎてキスまでしちゃったけど、元気君も満更でもなさそうだったし、嫌われなくてよかった」
ほっと心の中で安堵しつつ、私は夕食の支度を進めていく。
今日は、元気君との同棲生活が上手くいきますようにという願いを込めて、同棲祝いの引っ越しそばを作っている。
手際よく下ごしらえを終えて、つゆを完成させた。
あとは元気君がお風呂から上がってくるタイミングを見計らって茹でるだけ。
手料理はお弁当で何度か作ってあげたことがあるけど、こうして出来立てのご飯を食べてもらうのも、考えてみれば初めてかもしれない。
「えへへっ、元気君、私の手料理褒めてくれるかな?」
私は妄想を捗らせながら、つい夜のことを考えてしまう。
元気君と付き合い始めてから三年半、ずっと我慢させてきてしまった。
だから、これから元気君には、もう周りのことなど気にせず、私のことを女として好き放題して欲しいと思っている。
もう恥ずかしがっている暇など無いのである。
一刻も早く、元気君を性欲のままに堕とす必要があるのだ。
そのためにも、まずは甘えたりスキンシップをたくさん取るって、元気君に私のことを女の子として意識してもらわなきゃ。
「今まで我慢させちゃった分、何でもさせてあげるからね!」
私は握りこぶしを作り、ぐっと力を入れて意気込むのである。
そして、元気君が我慢できなくなった暁には……。
私の妄想ワールドが炸裂する。
~~~~~~
「千陽っ!」
「きゃっ⁉」
私は強引に肩を掴まれながら、ベッドに押し倒されてしまう。
元気君は、私に覆いかぶさるように乗っかってくる。
心なしか、吐息は荒く、表情はせっま詰まっている様子だ。
「千陽……俺、もう……我慢できない!」
そう切実に訴えて来る元気君を見て、私は愛おしいと思いつつ、にっこりと微笑みながら答えるのだ。
「うん、いいよ。きて?」
っと。
~~~~~~
「////////////」
もう私のバカ!
なんてはしたないこと考えちゃってるのもう!
でも、もう私たちを邪魔するものは誰もいないのだから、あとは元気君のリミッターを外してあげるだけ。
「待っててね元気君。すぐに私の虜にしてあげちゃうんだから!」
とそこで、私はとあるアイディアを思いつく。
「そうだ! お風呂上りに驚かせちゃお!」
私って天才なのかも、こんなアイディア思いついちゃうなんて!
「ふーん、ふーん、ふふふーん♪」
鼻歌を歌いつつ、にやにやした笑みが止まらず、口角が上がりっぱなしだ。
今か今かと元気君がお風呂から上がってくるのを待ちながら、私はそばを茹でていくのであった。
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