僕の隣の探偵と言ったら

@harusansan

第1話

「なぁなぁ」

そいつはそう言いながら僕の肩を叩いてきた。

「...」

後ろから聞こえる声に無視をする僕。

「なぁーって」

そう言ってそいつは僕がかけていたメガネを取ってきた。

「うぇーい。」

「返してほしかったら俺と話してよ」

「...」

当然無視をする僕。

高校生にもなってなんて幼稚なことをしてくるのだろうか。

そう考えると笑いを堪えるほうがしんどそうだ。

「はぁ…」

流石に懲りたのかそいつは少し黙っていた。

ただ、本当に少しだけだった。


すると、そいつは何を思ったのか教卓に立ち上がって手を上げ、

「今からおもしろい話しをしまぁーす!」

と言ったのだ。

いきなり何を言い出したのかと呆れてしまったので無視を続けることにした。


「あのな、昨日君が死んだんだ〜」


「...っ!」

一瞬僕とそいつの中に間ができた。

「えっと、昨日君が死んだんだ」

僕がなぜこんなを顔しているのが理解できなかったのかそいつは繰り返し言った。

僕からしたらこの話の何処に面白みを見出せばいいかのほうが理解できなかった。

そいつはどうやら馬鹿なやつだったみたいだ。

流石に今の発言には無視出来なかった。

「今なんて言った?」

「おっ!やっと喋った。おはよー」

「今なんて言った?」

「お・は・よ・う!」

「……おはよう」

僕が返事をしたのがそんなに嬉しかったのかそいつは満足そうに笑っていた。

「分かったから、さっきの話しをしてくれないかな」

「さっきの話しって?」

「僕が死んだとか気分の悪いこと言ってたろ」

「あ~~。その話しね」

「そうそう、死んだんだよ」

そいつの軽い言い方に苛立つ自分がいた。

「だから、何の根拠があってそんなこと言ってるんだよ」

実際問題僕は生きている。

心臓も鼓動しているし、こうして呼吸もして気分の悪いことを言っているこいつと話しているわけだ。

「でも、本当に君は死んだんだ。私の目の前でね」

「だ・か・ら。僕は生きてるじゃないか!」

自然と語気が強くなってしまう。

「君の目の前で死んだって!?じゃあ犯人は君か?」

「訳の分からないことを言わないと人と会話もできないのかい?」 

「なら、やめたほうがいい。それは会話じゃなくて一方的な脅迫だ!!」

なんなんだこいつは。

バカも休み休み言ってほしいものだ。

僕はそいつを睨みつけた。

するとそいつは、

「おちついた?」

ときたもんだから、教室から出ることにした。これ以上同じところにいると僕がこいつを殺してしまいそうだった。

「待ってくれ!」

静止してくるそいつの声に耳を傾けるほど、今の僕には余裕がなかった。

それにも関わらずそいつは教室から出ようとする僕の肩を掴んで静止してきたのだ。

振りほどこうとしたが、なかなか離してくれなかった。

「本当に待ってくれ!面白い話しをするとは気分の悪い言い方をしてしまった。そこは謝る。悪かった」

「君に逢えたのが嬉しくてね。少しばかり茶化してしまったのだ」

謝っているみたいだが、話し方を変えたら耳を貸すとでも思ったのだろうか。

何が悪かっただ!?そこは謝る?そこはってどこだよ。全てを謝れ。何ならお前の存在自体を謝ってほしいくらいだ。

「もう、分かったから放っておいてくれないかな」

「これ以上、話していたら僕があなたに何かをしてしまいそうだ。」

僕はそいつの手を振りほどいた。

...が、

「それはできない相談だ」

とうとう呆れてしまい振り向いた。

「相談でもなければ提案でもない!」


「これは命令だ!!」


「...その命令は聞けないかな」

「聞けないかな〜。っじゃないの!!

これに君の意見なんか適応されない!」

「僕が嫌だって言ったら嫌なんだよ!」

そいつはこう言う僕を見つめて言った。

「駄々をこねたい気持ちは分かったから話しを聞いてはくれないかな?」

「その後なら、私のことなんかどうしてくれてくれても構わない」

「なんなら話しを聞いてくれないと君は私のことをどうにかすることもできないかもしれないよ」

「...どういうことだよ」

「僕にはお前の言いたいことが何も理解できないんだけど」

実際、話しの意図が見えなかった。


「逆に質問なんだけど、君は何ならわかるの?」


「...あ?」

「実は何もわかってないんじゃないかな」

そいつのその言葉が僕の胸をチクリと刺した。

「この状況も、この場所も、なんなら僕のことも」

そいつの言葉は釘のように食い込んで抜けなかった。

「そして、“君自身”のことも分からないんじゃないかな」

「本当に何をいってんだよ」

「頭おかしいんじゃないか!?」

釘を必死に抜くために僕は強がることしかできなかった。


強がる?

俺はなんで、強がっているんだ。


「いや~ね。僕の知ってる君はメガネなんかかけちゃいないんだよ」


「...え?」


そいつは取り上げていたメガネを僕に投げてきた。

とっさに受け取ってそのメガネを僕はただただ見つめた。


僕はメガネをかけていない?


何を言っているのだ。



「まぁ、それらすべて私の話しを聞いてくれれば解ってくれると思うよ」

「君ならきっと理解してくれるはずだ」

「ねっ!和藤(わとう)君」

もう、今の僕はそいつの声から逃げることができなかった。


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