第6話 呪われた森 ―3
「さあ、皆さん、お覚悟は宜しいですか。ここから一歩でも踏み出せば後戻りは出来ません」
近くの街に戻り、必要、不必要な物を買い漁ったお嬢様方。国境の立て札の前で決意を新たにして、呪われた森ヘと馬車を進めた。
「クスノハさんは前衛を、シルフィさんはわたくしの護衛を、リオン様はわたくしの肉壁役ですわ」
呪われた森に踏み入れた僕達。昔に使われた開拓村の土地を目指す。村を作ったという事は生活出来る立地条件が整っていたからだ。
「リオン、こっちであってるかぁです」
「はい、大丈夫です」
僕はルミアーナ様がお城から持ってきた昔に作成された呪われた森の地図と、僕が新たに手にいれたスキル『地形把握』を使い、方角を確認しながら森の中を進んだ。
「さっそく森の主が現れたよぉです」
クスノハ様が指した先の木の枝に、もふもふの尻尾がクルッ丸まっている可愛い猿がこちらを見ていた。
「サイレントクラウド」
すかさずシルフィがクルッテールの鳴き声を封じる魔法を唱えた。
近くの魔物を呼ぶべく鳴き声をあげようとするクルッテールだったが、その声が発せらる事は無かった。
「はいッ!」
クスノハ様が投げナイフを投擲して、ナイフがクルッテールの眉間に刺さる。
落ちたクルッテールを僕が回収して異空間収納に納める。クルッテールの尾や毛皮はこの先の開拓村での生活に役立つし、開拓クエストが終わった時に街で売り捌く事も出来る。
他にもゴブリンやオーク、狼や熊なども出てきたが、剣王クスノハ様のオラオラ無双の前では、紙切れの如く、バッサバッサと切り捨てられていた。
◆
それは油断だった。
「ルミアーナ様ッ!」
木の影から飛んできた弓矢。緑色の小さな魔物。ゴブリンアーチャーの手に持つ弓には既に矢は無く、その弓は、ルミアーナ様に向かって飛んできていた。
弓矢が刺さる。それはルミアーナ様ではなく、彼女をかばった僕の喉に。
「ハッ、あふ、はふ……」
僕の丸太のような首でも、弓矢は喉の奥まで深々と刺さっていた。
クスノハ様が投げナイフでゴブリンを仕留める。
悲鳴をあげるシルフィ。
ああ、喉が痛くて苦しくて、僕も悲鳴をあげたいのに、何故かシルフィの悲鳴を聞いて嬉しくなり、顔がニヤけてしまった。
「お兄様!」
いつも僕を嫌っているシルフィが、僕を心配してくれているのが、嬉しいんだ。でも、僕はここで死ぬのか……。
ゆっくりと僕の太った巨体が後ろに倒れる。
「よくやりましたわ、リオン様! わたくしが無事である以上、誰も死なせわしませんわ!」
ルミアーナ様がアイコンタクトをクスノハ様に送ると、頷いたクスノハ様は僕の方にきて、喉に刺さった弓矢を力まかせに引き抜いた。
(あぎゃああああああああ!!)
矢じりのかえしが、僕の喉を大きく切り裂く。
「ヒール!」
ルミアーナ様の聖魔法で僕は一命を取り止めた。さすがは聖神の魔法である。瀕死の僕が立ち所に回復した。でも扱いが雑じゃありませんかね?
でも目に涙を浮かべているシルフィの顔を見たら、またニヤけてしまった。
「な、なによ! 別にお兄様の事が心配だったわけじゃないからね! ――そ、そう、荷物よ! お兄様が倒れたら荷物運びがいなくなってしまうから!」
「オホホ。でもリオン様、よくぞわたくしを守ってくれました。お礼申し上げますわ」
ルミアーナ様が丁寧なお辞儀で、この僕に頭を下げた。そして、キッと森を睨んだ。
そしてルミアーナ様がとんでもない事を言い出した。
「シルフィさん、この先の森を薙ぎ払って下さい。誰がこの森の強者か、馬鹿な魔物達に知らしめて差し上げましょう。オーホッホ」
「分かりました。激風トルネェードッ!」
シルフィが右手を翳すと猛烈な突風が僕達の前にある深い森の木々を吹き飛ばした。
「おほぉー、シルフィっち凄えなぁです」
「オホホ、これで歩きやすくなりましたわね」
「お兄様。お兄様もこれぐらいの事をして、役にたってくれないとね」
フフ〜ンと笑みを浮かべ僕を見る義妹。いやいや、僕も命をかけて役に立てたと思うんだけどな。
◆
切り開かれた道を歩く僕達。森の中からはゴブリンやオーク等の魔物が泣きそうな顔で僕達を見ている。野生の本能が僕らに手を出してはいけないと警告でもしているのだろうか?
しかしクルッテールだけは違った。僕らを見つけると泣き叫ぼうとするので、クスノハ様とシルフィで撃退した。彼らは本能よりも強い何かに動かされている。そんな気がしてならない。
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6/24 お詫びと引っ越しのご連絡
新連載した【キモデブ】ですが、新規で【異世界】カテゴリーに引っ越しします。
改稿していたら【ラブコメ】のカテゴリーエラーになってしまいました。【ラブコメ】読者様で、【異世界】でもいいよ、と言う方は宜しくお願いします。
タイトルも以下に変わります。
【ヨシ、国を買おう! ―魂が異世界転移したらキモデブだった!?魔法の使い過ぎで激ヤセしたら三人の美少女婚約者が急に優しくなったよ!神様からのクエストで辺境の森に行ったので秘密国家を作ってみました。】
↓リンク 範囲指定 長押し 開く で飛びます
https://kakuyomu.jp/works/16817139555907663915
基本コンセプトは変わりませんが、異世界転移要素と、ザマァ要素が加わりました。
宜しくお願いします。
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