体の声なき声
シヨゥ
第1話
「寝すぎる?」
「そうなんだ。週末になると起きているのが辛くて辛くて」
そう言って同僚はため息をつく。
「やらなきゃいけないことが残っている間はどうにかなるんだけど、終わるなり睡魔が襲ってきて。床に倒れこむように意識を失う。ほんと一瞬で週末が終わるんだ」
「それって体が休みたいって言っているんじゃないか」
「体が?」
「そう。休みたいから休むもんだろう? だからそんなに抗いがたい眠気が来るってことはそれはもう自覚できていない疲れが蓄積しているってことだろう」
「そうなのかな?」
「体の声にならない声を聴くのも大事だぞ」
「そんなスピリチュアルな」
「眠気ならまだかわいいもんと思っとけよ。痛み、苦しみ、痒みとか感じ始めたら終わりが近い気すらしてくると思うぞ」
「それは、たしかに」
「まずは毎日早く帰ることを目的にしてみたらどうだ? そうしたら疲れも少なくなって週末に持ち越す分も軽くなるだろ」
「それが出来ればいいんだけどな」
そう言ってため息をつく。
「日本人は働きすぎだ」
「まったくもってその通り」
お互い目元のクマは濃い。
「頑張ろう」
「ああ頑張ろう」
こぶしを合わせてデスクへと戻る。その足取りは酷く重いのだった。
体の声なき声 シヨゥ @Shiyoxu
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