恋に恋でも 恋せよ乙女

TO BE

上) 恋したい!

「南 柚野みなみ ゆのは恋したい!!」


五階から見る 新しい景色を見ながら心に誓った。

わたしは昨日 人生4度目の引っ越しでここ稲葉市に来た小学6年生、2週間後には中学生になる。


そして、漫画とライトノベルが大好き。

ラノベと少女漫画と言ったら 異世界転生か恋愛でしょ?

異世界転生は、ちょっと現実味が無さすぎなのは13歳のわたしでも分かる。

でも 恋愛だったら 何とかなりそうな気がするんだ。


そこの君!!!君もそう思うでしょ?

お手軽コース(なのか?)としては”幼馴染”というのがあるんですが転勤族なわが家にはそれは無し!なのよね。

悲しいことに 最初に生まれた愛知県に居たのは一歳半までだから 幼馴染なんて作る暇もない。


はい 次!

図書館?

いいですね、今読んでいるラノベでも異世界なのに出会いは王立図書館でした!

あれですね 「届かなーい」「はい これ?」 っての?

でも 私 身長152で クラスで一番背の高い女子でした。

そして小学生には見えないのか 前の小学校でのあだ名は「オバサン」だった

「はい これ?」

て 渡すのはわたしの方かもしれない。


あ!食パンくわえた 女子が「キャー 遅刻する~」って走ってて ドンってぶつかるアレ?

駄目 パン持って席を立った段階で ママに怒られるのが分かりきっている

咥えて家を出るなんて言語道断!ですわよ

しかも ココ5階だしね 階段転げ落ちるわ。。。こっわ!!


じゃあ―


「柚野~ 中学に書類持っていくから一緒に行くよ!」


絶賛脳内妄想中!だったわたしは、ママの声で現実に引き戻された。


わたしは方向音痴だから一度で道を覚えられる気がしない

でも 中学はそんなに遠くは無いらしいから 3回くらい行けば覚えられると思う 多分 恐らく


既に一度は社宅から中学へ行っている。それなのに”遠くは無いらしい”って言っちゃう時点で中学の場所が分かって無いですね? ハイ その通りです。

でもさ、その時は車だったからで 歩いていけば覚えられるんじゃないかな? 


わたしはママと一緒に階段を降りる。

5階建てはエレベータをつけなくてもいいんだって、だから社宅はどこも5階建てなのかな?


階段降りたら 正面はもう駐車場 左手に行くと社宅の出入り口でその門柱の脇がごみ収集場所 コンクリートに黄色いペンキで枠が書いてある。

そのまま 左手に曲がって その一つ先の高校の角を曲がる あとは真直ぐに行って 信号のある横断歩道を渡って変形十字路を左に入れば 突き当りが中学校。

よし!覚えた!! 多分…だけど 恐らく ダイジョブ だと思われる うん 


**



「柚野 ゴミ捨てて来てくれる? 8時半までに捨てないとダメらしいの。お願い!!」


翌朝 朝ごはんを食べ終わってぼーっと じゃなくて 瞑想していたらママにお願いされた。

ママのお願いは命令だから わたしはゴミ袋を受け取って階段を降りる



「よいしょ」


わたしは 量の割にはあまり重くないゴミ袋を集積場所に置いた。


えっと 左へ行けば 高校だよね?

せっかく5階から下界で降りてきたことだし、ご近所をパトロールしてみよう。

高校の正門くらいまで行って帰ってくればいいよね?

けど けど けど ??? 高校の正門に辿り着かない?あれれ?


なぜかグラウンドの横を通っているんですけど? 何故なぜに?

グラウンドでは何かのスポーツをしている 

”迷子です”と知られれるのは恥ずかしいので ”このスポーツ見に来たんです”

という風情に見えるように立ち止まって眺める

小学生 もとい まもなく中学生の子供だってプライドは有るのです。


このスポーツ何だろう? ゴールポストはあるけれど? サッカーじゃないみたい?おお?!ジャンプしたよ で ボールをゴールに投げ込んだ、けど キーパーに阻まれる。シュートした人 倒れたけど大丈夫かな?

大丈夫みたい、もうアッチへ走って行ってる。コレって屋外でやっていいスポ―ツなのかな?

かっこいいけど 痛そうだよ


グラウンドの向う端まで行ったらUターンしよう”最初からそのつもりでした”って風情でね。


向う端まで あと少し というところで 後ろから軽やかな足音がして 追い越される 赤いジャージ姿のそのひとは わたしを追い越すと 通用門に右手をかけたかと思うと門扉を開ける事無く ヒラリと門を飛び越えて行った。


うっわああああああ かっこいい 


そのまま 真っすぐに高校の脇を行きすぎたら 小さな公園があった。

ブランコに座ると 目の前はプレハブが並んでいる 用具入れ? それとも 窓があるから部室なのかな?


軽くブランコを漕ぎながら ヒラリと門を飛び越えた姿を反芻する。

「もう もう もう 漫画みたいだったよ カッコよかった~」


こうして わたしは恋に落ちたのである

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