第1話 破滅の館

 白い城が立っている。ギャグではなく、本当に真っ白な城なのだ。

しかし、敷地内は荒れ果て、枯れた木や何かもわからない動物の死骸が転がっている。


 ―もう慣れた。大変なのは、ここからなのだ。


 先程、「真っ白な」城と言ったが、少し、いやそれなりの、思い違いがあったようだ。本当は、「真っ白だった」城と言うべきだろうか。今はというと、薄汚れ、ところどころ黒ずんだ壁に、決して離すまいとしているかのようにびっしりとツル植物がつたっている。


 「絶対入ってはいけない」とそう、人は思うだろう。しかし私は入る。入らなければいけない。ギィィィンと重い音を立ててペンキの剝げた柵を押す。敷地内に入り、一呼吸。一歩一歩、殺風景なその庭を進む。少しずつ、確実に、「城」に近づく。

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