第三話
川に遊びに行くようになってから三日目、その日はシロハの家にあったボールを持ってきていた。
蹴り飛ばしすぎて橋の下に転がっていったのを「あたし取ってくるね!」と飛んでいく。
ボールは確かに橋の下に行ったのに、なぜか見当たらない。
「おっかしいなー」
堤防の端の方に寄っていくと、後ろから声を掛けられた。
「そっちじゃないよ」
振り向くと、シロハと同じくらいの背の青年が居る。ただ、シロハとは違って顔を隠していないし、腰からは羽が生えている。
「あ、あなたも天使なの?」
ボールを探していたことも忘れて近くに寄っていく。上下左右から宙に浮きながらじろじろと見まわした。
「わー、すごいね、あたしの羽よりおっきいね! あ、ボール! 探してたの、ありが……」
ボールを受け取ろうと手を伸ばしたのに、すっとかわされた。
「? なんでボール返してくれないの?」
「話をしにきたからな」
青年はボールを横に置いて、橋の下の坂に腰かけた。
「
聞いたことがない言葉だ。
「? 宝物ってなあに?」
「……まさか忘れてるのか?」
疑念の目を向けられる。なんだか良い心地はしないなと思った。
「あたしは何も知らないよ。神さまがシロハと一緒に居ろって言ってたことしか知らない」
「シロハと? ……ありえないなあ?」
青年ははんっと嘲り笑う。東雲はむっとして青年に言い返した。
「シロハのことを馬鹿にしてるの? シロハは優しいんだよ。あたしのことをずっと忘れずにいてくれたんだ。今日だって一緒に出掛けてくれて……」
「シロハは嘘をついている」
唐突に出てきた言葉にぎょっとして固まった。
「シロハのことを何も信用するな。それから、宝物を返してくれるまで俺は帰らないからな」
そう言って、青年はボールを置き去りにした。
「神はお前のことを見てるぞ」
あんまり良い気持のしない捨て台詞と共に、東雲はボールを受け取ったのだった。
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