弾を変えれば有効
1階に移動して金庫のような扉をくぐると目の前には映像でみた黒い靄が揺らいでいた。
「1列横隊、社長を基準に並べ!」
佐藤さんの掛け声のもと横に並ぶ。
「全体、正面に敬礼!」
全員がそろった動きで敬礼を行う。
「直れ!これよりダンジョン講習を行う。今回講習するのは私、佐藤と少し遅れているが護身用具を運んでくる元部下の小岩井だ」
ちょうどその時入り口から台車を押した人物が現れた。
「隊長呼びましたか?」
「呼びましたかじゃない。今隊列を組んで朝礼を行っているのにのんきに返事をするな」
「は、はいすみません」
怒られて、慌てて列に加わった小岩井さんを見て佐藤さんはため息をついた。
「今日のお前は、講師役だろ?だったら立ち位置はどこだ」
「すみません!」
足をもつれさせながら佐藤さんの横に並びなおした。
「まったく、それでは今日の1-1名駅前ダンジョンの詳細を説明していく。ここの1階層目はヒト型1種の『グール』と特殊型1種の
そこまで、話すと小岩井さんに手で指示を出すとそれだけで分かったのか、運んできた台車から武装を取り出し配布していく。
「各自に装備を配布、点検を行う。当初の聞き込みの通りの護身用具を用意したが、扱えなかった時のために棍棒を用意しているので、サブとして持ち運ぶように」
そういわれ、それぞれの武器が配布されていく。
社長は刀
東さんは小手
渡辺さんは身丈ほどある鉄製の丈
田中さんはスコップ
藤沢さんは薙刀
最後に私は鉄球
と、それぞれ選んだ武器を受け取ると点検し始めた。
「この護身用具はこの施設の備品であるためあまり使用されていないので、点検を怠ることのないように」
そういうと、東さんと田中さんと私の武器の点検に付き合ってくれた。
「安藤さんよろしくです。それにしても鉄球なんてマニアックな武器選びましたね」
小岩井さんが点検の手伝いをしながら話しかけてきた。
「おい、警備業は武装できないんだ、護身用具と言わないと聞き耳立ててる奴が騒ぎ出すんだから間違うな」
小岩井さんは、佐藤さんからの注意に平謝りを返していた。
「いやいや、ただ臆病なだけですよ。銃を使う勇気も、槍で戦う勇気も、ないから投石でどうにかみんなに着いていこうとしているだけですよ」
「ふーん、そうなんですね。」
鉄球の点検を一通り済ませると、肩にかけていた見た目がP90に似た銃らしき物を叩いて言う。
「この講習が終わっても続けるようならこの武器紹介しましょうか?」
「え?そもそもこれは何ですか?銃にしては銃口が塞がってるようですし」
「これ気になるよね。これはレーザー銃で幻獣型30種のドラゴンの鱗も打ち抜ける逸品だよ。外装は完ぺきに趣味で、肝はこの銃口部分の魔石なんだよ。この魔石で増幅した光が打ち抜くロマン武器、控えめに言っても最高だよね」
空中向けて構えながらテンション高く話し始めた。
「でもこれ、ダンジョン外だと逆に減衰して、使い物にならないんだよね。その分晒して歩いても警察にはレーザーポインターと言って見逃してもらえるからいいんだけど」
いきなりのテンションの上げ下げでたじたじになっていると
「お前は、いい加減にしろ。護身用具の紹介はかまわないが、武器と言うなと何回いったら」
佐藤さんの説教で、ダンジョンに入るのはもう少し先になりそうである。
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