新たな仕事
「開始する前に今日の教育内容と、指導教育責任者の説明をする」
少し緊張した様子で社長が切り出した。
「本日より、5号の指導教育責任者として入社頂いた佐藤さんだ。佐藤さんは元警察官で10年前に現れたダンジョンを散策する『ダンジョンウォーカー』をなさっていたが、この度の警備業法の改正で新たに5号が追加されることになり、弊社へ入社頂けることとなった。」
そこでまで話すと、佐藤さんに視線を向けるが先を促される。
「『ダンジョンウォーカー』については皆もしていると思うが、日本では警察や自衛隊のOBがもととなりできた機関だ。ダンジョン内の異空間の調査、モンスターの生態、新鉱石の採取、スキルの調査等を行っている。なぜ、警察機関等が中心となり立ち上げたかについては、人間に対し敵対的な行動をとるモンスターが現れたためである。ただ、最近の調査で銃や爆薬に対して耐性を備えたモンスターが現れたために、スキルを取得した者が、中心となり活動している。」
手元のモニターを見ながら話し始めた社長から一般社団法人『ダンジョンウォーカー』のホームページを見ながら話し始めた。
説明を聞きながらも、『ダンジョンウォーカー』出身者がこの会社に入社したのかわからない5人は社長の話に耳を傾ける。
「この度、ダンジョンの危険性がある程度把握できたことにより、『ダンジョンウォーカー』の活動の一部を警備会社に移行することとなった。そこで、警備業法第2条第5号として『異空間における人の身体及び財産に対する危害、その他の活動に際し事故等の発生を警戒し、防止する業務』という条項が追加された。そこで、『ダンジョンウォーカー』との協議の上、佐藤さんを弊社に入社という形で出向していただきました。それではお願いします」
紹介された佐藤さんは近くの椅子に座った社長を後目に、説明を引き継いだ。
「それでは、紹介いただきました、【佐藤 一】です。『ダンジョンウォーカー』に籍を残しているため、いつもいるわけではありませんが、どうぞよろしくお願いします」
登場や見た目に反して、物腰が柔らかい印象を与える挨拶の仕方で場の緊張がほぐれてくる。
「今回、ダンジョン関連の活動を警備業務として一部移行するにあたり、本来であれば制定後、期間を開けてからの施行しますが、今回制定後半年と短い期間の施行となったのは、皆様もご存じの『預言者』の預言によるところが大きくなっています。」
そこで話を区切り、全体を見渡して話を聞いているか確認して次を話し始めた。
「国際連盟より、災害などに対しての備えの徹底、いまだ未知のダンジョンの調査を急がせるように各国に通達し、日本政府は今年度中に制定予定であった警備業務への移行を急がせて、人手をふやし、調査を急がせる方針となりました。報道規制に関しては、モンスター愛好家【ホワイトピース】の妨害が懸念されて行われたとのことです」
最初から準備されていたのか、部屋を暗くしプロジェクターに説明にあわせた画像を表示させていく。
「この施行を急いだ影響で、『指導教育責任者』の確保ができない状況となり、『ダンジョンウォーカー』にて『指導教育責任者』を取得し、警備会社に転職された方が居ない警備会社に対し、現役の『ダンジョンウォーカー』が『指導教育責任者』を取得したものを、出向することとなりました。ここまでで質問ありますか?」
「一つよろしいでしょうか」
渡辺さんが挙手しながら質問を行うと、手で続きを促される。
「『指導教育責任者』を出向とありますが、現警備会社に勤めている者に取らせるわけにはいかなかったのですか?」
質問に対しすこし考えながら佐藤さんは返答を行った。
「後々は、そのように行うとのことですが、今回新たに施行された5号は他と違い戦闘を行う関係で、取得時の必須科目として戦闘系と鑑定系統のスキルの取得が必須となっており、ダンジョン経験者が『ダンジョンウォーカー』以外のものが圧倒的に少ない状態で、『指導教育責任者』取得は難しいと思われるため、現在の方法となりました」
質問した渡辺さん以外も納得したのを確認した佐藤さんは話を続ける。
「ほかに質問ありませんか?なければ続けます」
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