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 「……こんなんでどうでしょう」とケイコが言った。

 「ふむ」と天使が言った。「採用」

 「きゃー!」ケイコが言った。「いえーい!」

 「ケイコ、がんばります!」ケイコが敬礼した。

 「よろしく頼む」天使は二本指で敬礼した。

 「天使さん、天使さん」

 「なんだい」

 「空飛べるの?」

 「これか?」折り畳んでいた翼をワイパーのように振った。「まあね」

 「すご!」ケイコが言う。「飛んでみせて!」

 天使はその場で浮いてみせた。

 「ほおおおおおおお」ケイコはたまげた。「超すげえええええ」

 天使は降りた。

 「それより」と天使が言いかける。

 「天使さん写真撮ろ!」とケイコが言う。

 「…写真はNGでね」だが、ケイコはすでに自撮りの画角調整に入っていた。

 カシャ。カシャ。カシャシャシャシャシャシャシャ――連射。

 深く息を吐く天使。

 「あだ名は?」とケイコが言う。「天さん?」

 「……」と天使が言う。「それはもういるな」

 「じゃあ天ちゃんだね」

 「え」と天使が言う。「ああ」

 「それより」と天使が言う。

 「明日病院に行ってきなさい」

 「なんで?やだよー」

 「残された時間は…」と天使が言いかける。

 「やだし」とケイコが言う。

 天使は仕方なく病院についていった。

 レントゲンを撮らす。

 手の骨はまだら模様だった。

 「……おっ!」とケイコは言った。「……きれい」

 天使は片手でゆっくりと頭を抱えた。

 「なんに使うの?」

 「ん」と天使が言った。「ぶっ飛ばしたいやつがいてな」





 天使、何飲むの?


 ギュイーンと鳴らす。 ああ、その音はコーラね。



 天使、ここもっとギター抑えない?


 ピキィーンとピッキングハーモニクス。 ああ、嫌なのね。



 天使っ。


 飛行機のジェット音のようなピックスクラッチ。 ごめん何でもない。





 ねぇねぇねぇと、内緒話のようにケイコに捕まる。

 「天ちゃんてさ」とケイコが言う。「だいぶナルシスト強めだよね」

 …今さら!?

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