第22話 奴隷の街


タケミ達はオスティウムを離れ、2日後。


一行は次の街に到着していた。


「お腹空いたなー、この街にはご飯あるかなー」

「おい、もう飯の話かよ。買った食糧も殆ど食っちまったし」


ユイは食事できるところを探していた、それを見て呆れる様子のネラ。ユイが持っている食料を入れた袋はもう殆ど空になっていた。


「ユイすげぇ食ってたもんな。魔法使うと腹減るんだな」

「お前もな。食料の購入量はもっと増やさねぇと駄目か」


タケミも腹を先ほどからずっと鳴らしている。


「最初の街よりも小さいなここは」

「まあな、お前らの健啖家っぷりがもう少し抑え気味だったら寄る予定じゃあなかった場所だ。さっさと食料の補給だけ済ましてここを出るぞ」



街中を進むと鎖に繋がれた人々反対側から歩いて来た。


「なんであの人たち鎖に繋がれてるんだ?なんかやらかしたのか?」

「いや、あれは奴隷とその商人だ。あんまみるなよ、この街には食料の補給の為に寄ったんだ。無駄な厄介ごとに首ツッコむなよ、ここはそう言う街なんだ」


ネラが小声で注意している、どこか焦っているようにも見える。


「確かにみていて気分の良い物じゃないね。可哀そうだけど……」

「……」

ユイとタケミはネラの忠告を聞いて静かに道を進む。


「いやだー!!」

その場を過ぎ去ろうとすると一人の子どもの声が。

どうやら鎖に繋がれた奴隷の子どもが男に逆らっているようだ。


「てめぇ!暴れんじゃねぇ!!」

男が子どもを蹴り飛ばす。


その光景を見たタケミは気付けばその男の肩を掴んでいた。


「あ!」

「しまった……もっと早く通り過ぎないと行けなかったか」


ユイとネラがその後を追って行く。


「何か御用で?」


「子ども蹴とばして何してんだ」

タケミが怒っているのはその顔をみれば一目瞭然だ。


「お兄ちゃん助けて!」

彼を見た子どもたちがタケミの元にかけよる。


「てめぇら何勝手に動いてんだ!!殺されてぇのか!!商品の分際でよ!」

男は鞭を子ども達に振るおうとした。


「ッ!!」

振り上げた男の手をタケミが掴んだ。


「どうしてだろうな、こういうの初めてみる光景だっつーのにこんなにムカつくのはよ。別にその子達の気持ちが分かる程の過去がある訳でもねぇのによ……」


「はぁ?さっきから何言ってんだ!この!」

男はもう片方の手でナイフを取り出しタケミに突き立てた。


だが当然そんなものは彼に刺さる訳もない。


「な、なんだてめぇ?!」


タケミは男の腕を掴んでいた手の力を強めた。

すると渇いた音、湿った音が混ざったものが一瞬手の内から響く。

男の腕は握りつぶされていた。


「~~~~~ッ!!???」

その場に倒れ込む男、少しするとあまりの激痛で気を失ったのか静かになった。



「何てことしやがる!!」

その場にいた他の商人が銃を取り出し、背後からタケミに向かって発砲しようとする。


「が……あ?」

男は斬られてその場に崩れ落ちた。


「はぁーあ、クソ、これは避けたかったのに」

倒れた男の後ろには鎌を持ったネラが立っていた。


「お!手伝ってくれるのか!」

「お!じゃねぇよバカッ!!こいつらは後回しにする予定だったのによ」

怒鳴りながらも他の商人を斬って行くネラ。


「クソ!こんな事してただ済むと思うな!こいガキ!」

商人の1人が近くにいた少女を捕まえて人質にとる。


「このガキがどうなってもッ……!」

相手が言い終えるよりも前にユイの杖が顔面に叩き込まれた。


「ふん、タケミがやらなかったら私が止めてた。流石に子どもに手を上げてる奴を見て見ぬふりは出来ないよ」


ユイは子どもたちを背にして立つ。


「お前ら俺たちの後ろにはどなたがついてくださると思ってんだ!!興業の大領主カテナ様、その幹部のジェイル様だぞ!」


「知るかよ」

こうして最後の1人もタケミに殴り飛ばされた。




事が終わってから周囲を見渡すタケミ。

周囲には商人が倒れ、その光景を見ていた者達は恐れた様子で立ち尽くしていた。


「うーん、これはもしかして……」


顎にてを当ててタケミはネラ達に振り向いた。


「やっちゃいました?」

「ようやっとかッ!!」

ネラが蹴りながらツッコむ。


タケミ達がそう話していると突然側に立っていた奴隷たちが倒れる。


「どうした!」

タケミが一番近くにいた者に駆け寄る。


「が……ッ!い……き……が!」

奴隷は呼吸が出来ていないようだ。顔を歪めて首に着けられた首輪をひっかいている。他の者も同様に苦しんでいる。


「これ外せば良いんだな!待ってろ」

タケミがその首に手をかけると

「待ってタケミ!」

ユイが止める。


「これは魔法だよ。首輪を外したら多分もっとひどい事になる!私に任せて」

そう言ってユイは首輪に触れる。


すると淡い光が首輪から放たれ、首輪が真っ二つになり地面へと落ちた。

彼女は他の奴隷の首輪も同様に解除していく。


「ハァッ!はぁ、はぁ、息が出来る……!!ありがとうございます!」

呼吸を取り戻した奴隷たちはユイ達に感謝した。


「きっとこいつ等がが気を失ったのが理由ね。歯向かって危害を加える事が出来ないようにって事かな、多分逃げても同じような事が起きてたよ、本当やる事が汚い」


未だ気絶している奴隷商人たちに侮蔑の目を向けるユイ。



タケミ達は酒場で大人数と食事をとっていた。


「ほら!お前らもどんどん食え!」

「わーい!こんな沢山のご飯久しぶりー!」


奴隷だった子どもたちに食事をとりわけ渡すタケミ。


「あの……本当に良いのでしょうか」

大人たちはおどおどしながら皿を受け取る。


「良いんだよ。もうやっちまったもんはしょうがねぇしな……店主!酒お代わりお願い!」

ネラは酒を注文する、酒場の奥から店主が酒をたんまり抱えて持ってきた。


「いやぁ、本当にありがとうございます!自分の首輪まで外して貰って」

何度も何度も頭を下げる店主。


「この街で働いてる人って奴隷ばっかりなんだね」

ユイが店主に話しかける。


「ええ、この街では奴隷商売が盛んに行われていて……。そこを牛耳ってる奴が大領主の幹部って事で反抗しようなんて者はいなくて」


「そういえば大領主つってたけど、ソウトゥースやフォルサイトとこのと違う名前じゃなかったか?」

「ああ、カテナって言ってたな。ここの領地はソイツの管轄外の筈だが。もしかしたらこそこそと隠れて商売してたのかもな。連中も一枚岩じゃないって事だ」


タケミとネラの話を聞いて子どもが近寄って来た。


「カテナ!あいつ嘘つきなんだ!」

「ねぇ!お兄ちゃん、パパとママを助けて!」


子どもたちにそう言われ、タケミが彼らの頭をなでる。


「おう、飯食い終わったら行くか」

「そうだね。パパとママはどこにいるのかな?」

ユイが優しく子ども達に語り掛ける。


「えっとね。街のはじっこに大きなお家があってね、そこにいる!」


これを聞いたタケミは立ち上がる。


「ふぅーご馳走さん。店主さん、お代ここに置いとくぜ。皆の分も入ってるから。余ったら貰っておいてくれ。このあと色々と必要だろ?」



タケミ達は子ども達が言っていた館の前にやって来た。

「ここかー普通だな。まあちょっと大きい建物だけど」


館と言えども個人が住む分には大きめか、といった印象ぐらいしかない。


「なぁ、タケミ。あの場じゃあ言わなかったけどよ」

建物に向かうタケミにネラが声をかける。


「ん?どうした」

「お前の気持ちが分からない訳じゃない。でもよ、助けられる人間は限られてる、こんなやり方じゃあな。奴隷なんてこの街に限った話じゃないんだぞ」


ネラの話を聞いたタケミは振り向く。


「確かに俺はネラを手伝うって言ったけどさ。でも俺はあの人たちを助けたい、ただそれだけだ。別にあの子ども達為じゃない、俺の為だ。ここで助けなかったから俺はきっと後悔する。そんな俺じゃあネラの手伝いも満足にできねぇよ」


そう言い切るタケミをみてため息をつくネラ。

「はぁ、私を手伝う見返りで……”挑戦させてやる”って言っちまったからな」


「それ抜きにしてもタケミを止めるの無理でしょ。私も今回はこっちに賛成だし」

ネラの後ろからユイが声をかけ、タケミの隣に立つ。


「まぁ大領主の幹部が絡んでるし……よし!さっさと終わらせちまうぞ!」

顔を両手で叩き気持ちを切り替えるネラ。


3人は館へと入って行く。

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